(小坂俊史/竹書房バンブーコミックス・全2巻)
いまにもつぶれそうな月刊マンガ誌、「月刊フリップ」の編集部と作家陣をテーマにした、業界インサイド四コマ。
たった三人の編集部員で切り盛りする編集部の中で、豪快なボケっぷりを発揮しつつみんなの足を引っ張る望月ももと、周りの人達のやりとりが爽快な本格派四コマ。
来月号が出てなくても不思議は無い、昔のス○○ミかアワ○○のような危急存亡の秋を毎月迎えてる月刊フリップ。いやー、いいですねー、こういう雑誌を講読してたら。毎月本屋に行くのが楽しくて(そうか?)。
そんな雑誌のインサイドを鋭く(?)描いた四コマで、ことにマイナー誌を愛読してるようなタイプのマンガ好きには実際には業界の内幕を知らなくても、どことなくうんうんと頷けてしまうような、そんなネタがお得感あって嬉しくなってしまいますね。
その製作に関わる浦辺さん、編集長、諸先生や持ち込み君の個性というか芸風がしっかりしていてグッド。そしてボケ部門を一手に引き受けるハイパーマイナス編集者・ももちゃんのダメっぷり、そのミラクルな失敗の数々がが全ネタに炸裂していて、浦辺さんや白根先生の心境にシンクロしてココロの中でツッコミかましつつ読み込んでしまいます。読んで楽しい、そんな味わいのある四コマですね。
やる気の無さは天下一品。防虫に防寒に椅子の下敷きにと、原稿用紙の新たな使い道を日夜開発し続けるフリップのオウンゴール、ももちゃんです。
それなりに一生懸命だったりするんですけど、思いっきり常識からずれてる、そんな部分が楽しいですよね。自分の職場にこんなコがいたらかな〜りイヤですが(笑)。
とにかくなにをしでかすかわからない、そんなブービートラップぶりがいつも変わらない魅力。「フリップ」のボケ部門の重責を一身に背負いつつ突っ走るダメダメっぷりがいっそ爽快な女のコです。
まずはももちゃんのお目付役、浦辺さん。ももちゃんがももちゃんなんで出来るヒトなのかどうか分かりませんが、「出来る」ってな雰囲気を滲ませてますね。ももちゃんとのボケ・ツッコミ関西系漫才コンビは息が合ってて絶妙。読者に成り代わってももちゃんにツッコミを入れてくれる準主役です。
他にも中日ファンという以外に個性が目だたないけど、時折不条理な言動をかましてくれる編集長、ダメダメ編集望月の被害を受け続ける町田先生、他人事とは思えない赤貧が芸風の白根先生、月刊ペースで玉砕させられる上に名前も貰えない持ち込み君、そして一度は顔を見てみたいぞ津山先生と、脇役陣も個性的。彼らとももちゃんのそれぞれのやりとりが楽しくて、次のネタは?次のネタは?とせがむようにページをめくってしまいます。
マンガ編集業の内輪ネタに絞った作品ですが、マニアックな内容ではなく、マンが好きの方なら誰でも抵抗なく楽しめると思います。とはいえ、やはりマンが好きの度が高ければ高いほど、ネタは楽しめるかな、という気がしますね。キャラクターも少なく、もも=ボケ、他のキャラ=ツッコミという構造がはっきりしているので、入りやすい作品だと思います。が、けして単調ではないですよ。
2001.3