(卯花つかさ/芳文社まんがタイムKRコミックス・全5巻)
それは告白から始まった。
女子校育ちの純粋培養で、男子が苦手な芦原向日葵は、度胸試しのために通学路で見かける少年・甲斐悟に告白。
てっきり振られるだろうと思っていた向日葵だが、なんと甲斐にOKされて……
とびっきりピュアで初々しく、不器用な恋愛劇。
なになになになにこの初々しさ!
手をつなぐ、初めてデートするなんていう少女マンガの定番シチュエーションでドキドキする……なんてーのよりはるか手前、自己紹介をする、メアドを伝える、そんなところから初々しさ満載で、読んでいて身悶えが止まらなくなってしまう、とってもスローなピュアラブストーリーです。
半ば肝試し的な動機でした告白からはじまったおつきあい。
当然、そこには愛なんてないはずなんですが、それなのにそれなのにそれなのにッ! お互いを気づかいながら、おっかなびっくり距離を縮めていこうとするふたりの思いがなんともいじらしくて、ハラハラドキドキしながら見守ってしまうんですよね〜。
読んでいて頬が緩みっぱなしになる、そんな甘さがクセになるッ!
悶絶必至、覚悟して読んでください♪
女子校育ちの純粋培養!
男のコの眼を見て話すとか、手をつなぐなんてもってのほか。写真に写った男子さえも正視出来ないほどに男のコが大の苦手。
それが本編の主人公、芦原向日葵(ひまり)ちゃんです。
ふわっとした、腰まである長い髪がいかにも、無垢に育った女のコ、って感じでいいですよね〜。
男のコはみんな牛乳を1パック一気に飲んだり(私もやってましたけどね、中学の頃……)、炊飯器ごとご飯食べたり(さすがにこれはない)していて、手でも握られようものなら、そのまま骨ごと手を握りつぶされちゃう(絶対にない)、なんて信じ込んでいる、「明治時代じゃないんだから!」と突っ込まずにはいられない、でもそこがかわいくて守ってあげたくなる、そんな女のコなのです。
度胸試しのために甲斐くんとつきあうことになったあとも苦手意識は変わらないんですが、それでも少しずつ甲斐くんを知ろう、分かろう、近づこうとする誠実さ、健気さが向日葵ちゃんのよさ。ステップを1歩踏み出すたびにパニクッちゃうことろも、なんとも可愛らしいんですよね〜。
その一生懸命さを愛でたくなるような、小動物系の女のコ。
「はじめてのおつきあい」がこんなピュアな女のコだったら……最高ですよね〜。
向日葵ちゃんの友達ふたりもこれがまたいいキャラクター。
向日葵ちゃんに告白を唆した張本人である常盤柊子ちゃんは、ふわっとしたイメージの恋に恋する女のコ。しかし「恋に恋する」のエネルギーが、自分にではなくひたすら向日葵ちゃんに向けられているという、なんとも有難迷惑な女のコなのです。もちまえの妄想力で向日葵ちゃんを振り回すこともしばしば。まぁ、そこがかわいいんですけどね。
黒髪眼鏡っコの樫野やえちゃんは、向日葵ちゃんを猫っかわいがりする女のコ。そして向日葵ちゃんに近づくものを徹底的に敵視する、その単純な嗜好回路が楽しい女のコです。柊子ちゃんとは時に水と油、逆のベクトルを向くことも多いんですが、そりでいてうまく収まっちゃうところが、なんとも楽しいですね。
「きらら」レーベルの作品ですが、やってることは少女マンガ。
このへんの耐性があるかないかで好みは分れそうですね。
初々しいふたりをひたすらにやにやして楽しむ作品なので、そういう嗜好のある方はぜひ。
2013.9