(水沢めぐみ/集英社りぼんマスコットコミックス・全1巻)
■苑田鈴は、クールさが人気の転校生・片桐柊也に片思い中。いちごのショートケーキを美味しそうに食べる、普段は見られないような笑顔を見て一目惚れしたのだが、柊也はクラス一人気があるみのりの告白も振る始末で、ハードル高そう。
それでも、柊也に告白をした鈴だが、その場面をみのりに見られてしまい・・・「いちごの宝石」
■めぐるの通う学校は制服の規則が緩やかで、いつの頃からか、片想い・彼氏募集中の女のコは赤いリボンを、両想いのコは青いリボンを胸に結ぶという風習が出来ていた。でも、竜司とつきあっているめぐるはまだ、青いリボンをしてなくて・・・「8月の制服」
■前作の続編。クリスマス目前、それぞれにファーストキスを意識しだしためぐると竜司だが、そのチャンスをうまくつかめないでいるところに、竜司に片想いする下級生・れなが割り込んできて・・・「12月の放課後」
2つのストーリーを納めた、水沢めぐみさんの中編集。
「教科書どおりの作品」などという表現がありますが、この作品は少女マンガの教科書にしたくなるような正統派の作品。
「いちごの宝石」の鈴ちゃん、「8月の制服/12月の放課後」のめぐるちゃん、それぞれのヒロインに存在感があっていいんですよねー。どこかウリになるポイントもない、フツーの女のコ、って感じの最近では地味な感じのヒロインなんですが、ひとつひとつの表情、心情がきちっと描かれているから、その思いの丈がすなおに心に入り込んでくる、この手ごたえ。
ささいなシーンのひとつひとつに女のコが憧れるようなロマンス要素が詰め込まれていて、手堅い作風なのに、砂糖菓子のような甘さがあるんですよね〜。ま、正直このへんは好みが別れるポイントなのかも知れませんが、私としてはこの甘さが大切にしたいポイントだったりするわけで。
まさにタイトルどおり、女のコのいっしょうけんめいがきらきら詰まった、宝石箱のような一冊ですね。
おとなしくて地味目。ちょっとドジで、いっしょうけんめいがんばっても空回りしちゃったりする。
「いちごの宝石」のヒロイン、苑田鈴ちゃんはそんな女のコ。照れて真っ赤になった顔が強烈にかわいいですね。
がんばれよ、って応援したくなるけど、ちょっと意地悪してみたくもなる、そんな感じのコかなぁ。なんかほっとけないタイプですよね。
シンプルなロマンスストーリーの中で、瞳に喜怒哀楽の色を浮かべながら、いっしょうけんめい一途にがんばる鈴ちゃんの姿はほんと、じんと来ますね。
「いちごの−」では、鈴ちゃんのライバル・みのりちゃんもいいですね。鈴ちゃんと対照的な性格が持ち味で、ちょっと意地悪で、明るくて、気さくで、そんなところが鈴ちゃんとは違う意味で、女のコらしいな〜と思えてしまうのです。
「8月の制服/12月の放課後」の島本めぐるちゃんはショートカットの純粋活発少女+水沢風味で、もう心臓どっきゅん級のかわいさ。前髪の髪留めがいいアクセントになってて、おしゃれさんだな〜って気がしますね♪
ころころ変わる表情がショートカットと相まってちょっと幼い感じになってて、このへん、実に実にツポなんです。特に(><)ってなった表情なんか、抱きしめてしまいたいくらいキュートです。
今はやりのタイプの少女マンガではなく、正直なところ10年前のスタンダードという感じはありますが、その分、ストーリー、展開、画面作りのいずれをとっても読みやすく、ベテランらしい手堅さを味わえます。
“This is 少女マンガ”とでも言いたくなるようなムードを楽しみたい作品です。
2002.3