(佐渡川準/秋田書店少年チャンピオンコミックス・全17巻)
この作品は あびせげり さんに紹介していただきました。
中華料理「鬼丸飯店」の看板娘、鬼丸美輝。
彼女の並外れた身体能力、集中力のなさ、血の気の多さは店内に商店街に、破壊の嵐を産み落とす。
次から次へと飛び出すハイパワー&ハイテンションアクションに笑いが止まらない、イキオイ満タンのギャグマンガ。
いやいや、久しぶりに本気で楽しめるギャグ漫画を読みました。
ギャグには欠かせない突き抜けたテンション、ページを追うごとにエスカレートしていく強引な理屈、読者の介入を許さないまでに炸裂するマシンガントーク、ページをめくるたびに予想を気持ちよく裏切ってくれる気持ちのいいすっとぼけ系ネタ、奔出する血潮と圧倒的な暴力。
三拍子どころか四拍子も五拍子もそろったギャグ作品です。
ギャグでありながら、絵面や不条理に頼らず、とにかく正統派のかけあいと、無駄に高いテンションで勝負をかけようという、一本気な姿勢は個人的に高評価。
店で、出前の途上で、秘密基地で、燕の巣で、美輝の墓(?)で繰り広げられるバトルの数々を、目と脊髄と大脳新皮質で楽しめる、全身満足お笑いまっしぐらなレッドゾーン・コミック。
腹筋と頬の筋肉に心地よい疲れが残ります。
当作品のヒロインが「鬼丸飯店」が誇る(誇ってんのか?)無敵の看板娘・鬼丸美輝ちゃん。白エプロンが似合う、かわいい女の子ですが、一話目からいきなり吐きます。こりゃダメです。
血の気が多いです。あいてが不良学生だろうと子供だろうと猫だろうと烏だろうと、刃物とオカモチ振り回し、全身全霊をこめて戦いを挑みます。破壊力抜群です。あとには草木も残りません。もちろん行動に常識や理屈は通用しません。次のコマで何をしでかしてるか、まったく油断できません。どーにかしてください。こんなのがヒロインでいーんでしょうか。いーんです、ギャグですから。
向かいのパン屋の看板娘が神無月めぐみちゃん。端麗な容姿、明るい接客。美輝ちゃんの持っていない要素を持った、最大のライバルです。しかし特技はフランクフルトの串投げだったりして、やっぱり剣呑なキャラなのです。
作品の進行役というかツッコミ役が太田明彦。これといった特徴はないんですが、やられ役に堕することなく、微妙に安全圏に入ってるあたり、あなどれません。
美輝ちゃんの母親、「鬼丸飯店」をひとりで切り盛りする肝っ玉母さんが鬼丸真紀子さん。無敵の看板娘・美輝ちゃんを一コマで葬り去る、当作品最強のキャラクターです。このひとがいるからこの作品の常識性が保たれているというのか、美輝ちゃんの非常識性がさらに際立っているというか・・・そんな存在ですね。
ノリとイキオイ、それあるのみ。
ではありますが、割りとテキスト重視のギャグなので、「読める」ギャグ作品ではあります。ま、この辺が好みの別れ道かな、という感じはありますね。
各エピソードに特別の関連はなく、ギャグもショートレンジの物ばかりなので、ぱらぱらめくりながら好きな小ネタを楽しむのもいいですね。
2002.12