(霜月絹鯊/芳文社まんがタイムKRコミックス・全12巻)
桜庭雄斗は、オープンヲタクな高校生。隣の席の柏木琴子(ことね)に仄かな憧れの感情を抱いていたが、彼女がヲタク嫌いだと知る。
しかし、バイトに入ったアニメ専門店で、アニメグッズを買い込んだ琴子を目撃してしまい……
ヲタク同士の、ピュアでシークレットな学園ラブコメ。
クラスで隣になった美少女が、実は憧れていた神絵師だった!
あーりーえーねー!
思わずフォントを大にして叫んでしまうようなシチュエーションの学園ラブコメ、それが「となりの柏木さん」です。
いいじゃないですか、あり得ないシチュだって。あり得ないシチュに、首までどっぷり漬かって楽しめる、それが二次元の楽しさなんですから!
空気読めなすぎの雄斗くんと、何でもマジメに考えすぎる琴子ちゃん、オタクで対人関係不全気味なふたりの関係は常にぎこちなくて、見ている側としては実にやきもきさせられる、そのへんがたまらないんですよね〜。
それも単に傍観してやきもきするだけじゃなく、自分にもふたりの心理に心当たりがあったりするから、ますますシンクロしちゃって、ありえないハナシのはずが、ぐいぐい引き込まれちゃうのです。
オタクらしい、スローすぎる恋に惹き込まれちゃう、読みごたえのあるラブコメディです。
腰まで届く長い髪をなびかせた、クールな印象の正統派美少女。
それが本編のヒロイン、タイトルにもなっている柏木琴子ちゃんです。
一見すると、ネコ科を思わせるようなクールな女のコなんですが、その実、秘密がばれることにビクビクしまくってばかりで、そこがなんとも、「小動物だよなぁ〜」と思ってしまうところなのですね。
絵を描くことが大好きで、だけど「絵を描く」ということに一生懸命すぎて、肩肘張って生きていて、いつもなんだかいっぱいいっぱいで。
そういう、不器用でマジメなところが、たまらなくかわいく思えてくるのですね〜。
琴子ちゃんの大親友で、最大の理解者が福田清花ちゃん。ふわっふわの髪が印象的な癒し系美少女、といった感じのルックスなんですが。
その実、歯に衣着せぬ性格で、言葉の刃でズンバラリンと雄斗をまっぷたつにしちゃったりする、なんとも痛快な女のコなのですね〜。
琴子ちゃんラヴ! というのを前面に出しているところも微笑ましく、琴子ちゃん以上に気になっちゃうサブヒロインです。
気になるといえば、琴子ちゃんとどっちが姉でどっちが妹だかわからない、ロリ顔お姉ちゃん・安倍川琴理さん(32歳)も気になるキャラクター。ストーリーに密接に絡んでくるわけではありませんが、人生の先達として、悩める若人に道を示す、存在感のあるオトナの女性です。
まさに王道の少年系ラブコメ。オタクと絵師の恋、というテーマですが、実在の作品をネタにしたようなギャグは少なく、そういった意味での濃さを求めると、肩すかしにあうかもしれません。
柏木さんや清花ちゃんに萌え萌えする用途もありますが、雄斗の一挙手一投足に「そりゃないわー」とツッコミをいれつつ、はらはらして見守るのが、正しい楽しみ方のような気もします。
2012.3