(田中メカ/白泉社花とゆめコミックス・全6巻)
この作品はTAKAJAさんのご紹介をいただきました。
大学生・堤円の前に現れたでっかいウサギの着ぐるみと、ショートカットの少女。彼らは霊界から死者の魂を迎えに来る「極楽送迎」の社員、ナベシマとゆずこと名乗る。
そして、円は幽霊に身体を乗っ取られても平気という特異体質なことが発覚し、なかばなし崩し的に彼らの仕事を手伝うことに。幽体離脱女子高生・阿熊さんも交え、4人が死者たちの「最後の願い」をかなえる日々が始まった。
ページをめくるといきなりうさぎの着ぐるみが出てきて、ほんわか系ボーイッシュ少女のゆずこちゃんが出てきて、んでもって省エネ強化月間だったり、メルヘン強化月間だったりして、とにかく「ワケわからーん」的に、インパクト強い出だしで始まるこの作品。
なのに読んだ感じはほんわかしていて、読み終わるとなんか、なごめる。そんなエピソードのオンパレードで、なかなか得難いムードを持ってます。
絵柄もほんわかした感じで、ふにふにのゆずこちゃん、ハイテな阿熊さん、それに作品のノリ自体もな〜んか、暖かい感じ。春の日溜まり、あるいは小春日和のようなぽっかぽかのムードに身体の芯までつかりたくなる、アップテンポふわふわ系とでも言うべき、得難い作品ですね。
赤ずきんちゃんだったりフリフリだったり、毎回のコスチュームが楽しみなショートカットろり娘ですね。困ったような顔しながらいつも笑顔を絶やさないその辺が妙に大人っぽいというか、見た目が子供なのに妙にサバサバしてるというか、なんかアンビバレントな、不思議な魅力を持った女性でもあります。
物分かりのいい感じで、あったかくて優しくて、でもどこかちょっと吹っ切れた感じの明るさがあって、ゆずこちゃんが醸し出すそんなムードは、そのまま「お迎えです。」の作品ムードにつながってますね。
見て楽しく、読んであったかくなる不思議な女性。幽霊にしとくのはもったいないですね。
3巻まででメインの登場人物が4人。少ないながら印象に残るキャラクターで上手く話をまとめてますよねー。個人的に、こういう作品は好感度大です。誰だ?単にキャラの名前覚えるのが苦手なだけだろー、なんつってるのは。
で、まずは黒髪パワフル少女炸裂風味な阿熊さん。このメンツの中で唯一、思ってることがストレートに行動に出る、エモーショナルなタイプで、好感持てますよね。読者の女のコにはゆずこちゃんよりこっちの方が好感度高いのでは。
うさぎの着ぐるみを来た不思議な極楽案内人、ナベシマさん。うさぎの時はテンション高いのに、素顔になるとクールになるそのメリハリがいいですね。いかにも酸いも甘いもかぎ分けたような、その物腰がよくて、けっこう気に入ってます。
で、主人公のえんちゃんこと堤円。優しい好青年という感じで、いかにもどこかにいそうなにーちゃんですね。ちょっと地味かなー、という感じもあるけど、ゆずこちゃんとともにこの作品の「ほんわか部門」を担当。ナベシマとのいいコントラストが光りますね。
毎回幽霊が出てきて、それを霊界に送り届けるお話ではありますが、一般の退魔師ものとは違い、オカルト的な描写やえげつないシーンは一切なく、ほんわかふわふわした気分で楽しめる作品です。
リラックスしてその雰囲気重視で楽しみましょう。
2001.6