(稀捺かのと/エニックスガンガンWINGコミックス全9巻)
時は天正の頃(1573−1592)。
いにしえに封じられた魔物「喰」が甦る時代、それらを倒すために活躍する4つの影があった!
という時代描写を背景に、退魔師・ライルと薙刃・鎮紅・迅伐の大食三人娘が、コミカル&鮮やかに、喰を退治しつつ賑やかに騒動を巻き起こす、エセ和風コミカル食いしんぼうファンタジー。
かなりびぜんや好みの作品ですねー。
キャラクターはかわいいし、コメディパートのすっとぼけたノリはなかなか味わいあるし、時代劇設定だしで、なかなかツボにはまった作品です。意外と「萌え」と「コメディ」両面でツボにはまる作品って少ないので、個人的に貴重な存在です。
すっとぼけコメディの魅力、といえばそれはイコールかけあいの楽しさ。薙刃、迅伐、鎮紅の総ボケ三人娘VSツッコミ担当パン職人・ライルのかけあい(もちろん結果は三人娘の一方的勝利)にエピソードの大半が割かれていて、畳みかけるようなその楽しさに笑いのテンションが右肩上がりで上昇して行きます。
もちろん萌え方面も磐石。ひらひら和装に、悠久の日本史を脈々と受け継ぐ我々の大和魂が桃色にときめき、元気な薙刃、おとなしい迅伐、大人っぽい鎮紅、それぞれの表情に激動の21世紀を生きる我々のピュアハートはわくわくしつつも和んでしまうのです。
いろいろなにかとおいしい時代劇コメディ。薙刃ちゃんたちに負けじと、満腹するまで楽しみたいですね。
元気ハツラツ和装っ娘。花魁みたいな変形巫女装束のひらひら感に、おっきな瞳とにぱっとした笑顔がなんともかわいいヒロインです。
甘いものへの一直線な執着心がほとんど行動原理の10割を占めるというあたりが(他のふたりもこのへんは同じなんですが)かえってかわいかったりなんかしまして、このへん高ポイントだったりするのですよ。
さらに、元気ボケとでもいう芸風で、ツッコミ役のライルと交わすかけあいがまた絶妙。1巻の8ページから4ページに渡って繰り広げられる薙刃ちゃんのマシンガントークとライルのツッコミは、作品世界に読者を引き込むいい「ツカミ」になってますよね。私もここで参りました(笑)。
おしゃべり活発な薙刃ちゃんといいコントラストになっているのが、迅伐ちゃん。無口なボブカット美少女。なんですが、怪力と怪しげな薬の調合が趣味というオプションが追加されていて、い〜いキャラクターになっています。
なんだかミョーに得体が知れないのほほんお姉さん、鎮紅ちゃんもいいですね。変に丈夫で、変に鋭くて、変に物腰が柔らかくて、変にかっこいい。なんとゆーか、三人娘の中で一番地味なようでいて、一番目だってるキャラかもしれないですね。
最後にライル。ボケ系三人娘にふり回されるツッコミ役、というのはコメディでは定番の、おいしい役どころですね。とにかくいつも薙刃ちゃんたちに振り回されているので、コミカルなイメージが強いですが、一応凄腕なんですよね。いつも最後は鮮やかに喰を仕留めてますし。
ただ問題は、喰を仕留めるシーンが1コマくらいしかないのに、三人娘に振り回されてるシーンが20ページくらいあるという、比率の問題なんですよね(笑)。
いちおう、天正時代という設定があり、それがタイトルになってもますが、はっきり言って雰囲気だけです。うそっこです。時代劇が苦手な方でも問題なし、気にせず和装萌えでGO!なのです。
ひとことで言うと「かわいい系」の平均点みたいな作品なので、コミックスのカバーを見て気に入った人なら問題なく楽しめるでしょう。
2002.8