(樋口橘/白泉社花とゆめコミックス・全6巻)
迷える小羊その1・安部みつると、その2・甘草夏彦。ふたりは「まともで穏やかな学生生活を送りたい」と決意して、高校生活に飛び込んだ。
しかし運命は皮肉。マゾヒストという本性から、中学で騒動を起こしたみつると、ナルシストという秘密ゆえに、他人に深入りできない夏彦が出会ってしまうのだった。
ナルシストなんて、マンガの脇役にはいくらでもでてくるけど、少女マンガのヒーロー役にでてくるようなキャラじゃないし、ましてやマゾキャラなんて、成人コミックでしか見かけないようなキャラ・・・
しかし、その出会いが新たな地平を開いた!
とにかく、少女マンガ離れしたインパクトあるキャラクターづくりが、どかんとくる一冊ですね。
ウェーブした髪に目尻のほくろが色っぽいドロンジョ系美少女・みつるが、顔をあざだらけ、鼻血まみれにしながら、「いじめて・・・ふみつけて・・・いたぶって・・・」と迫ってくるんだから、楽しすぎますって、この作品。
三角関係だったり、イジメだったり、コンプレックスだったり、ネガティブな要素目白押しで、なかなか深い作品のはずなんですが、すべてこのインパクトで吹っ飛びます。
あとがきによると「とりあえず美少女が気前よく殴られて鼻血を出すシーンが1度描いてみたかった」という動機が生んだ主人公・・・うーん、いきなり不憫ですね。
当HPで紹介する作品のヒロインとしてはちょっと珍しい、ちょっと色っぽい感じの美少女ですね。
でも大人っぽいと言うよりはコンプレックスを抱えながらも、純粋な女の子で、甘草くんの一挙手一投足にどきどきしたりするとこが、なんともいいんですよね。
しかしそれもこれも、Mという本性でぶちこわしなんだよな〜(笑)。
でも、そこがみつるの一番のチャームポイントなんですよね(笑)。
甘草くんもみつるに負けず劣らず印象的なキャラクターでいいですよね。
鏡を見て一気にナルシストモードになだれ込んでいくあたり、個人的にはこのさくひんの白眉だと思っています。
とにかく自分の顔の美しさに涙を流しながら陶酔できる・・・うーん、うらやましいほど素敵なキャラですな。
白泉社は時折、独特のノリを持った作家さん(川原泉さんとか・・・)を送り出して来ますが、樋口さんもその系統。この脱力系かつスローテンポな展開について来れるかどうかが鍵でしょう。読み手が男性か女性か、はあまり関係ないような気がします。
2000.10