骨董あなろ具屋

(山野りんりん/集英社りぼんマスコットコミックス・全1巻)

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Story

とある街の商店街外れにあるふしぎな骨董品店「あなろ具屋」。
のほほんとした直彦さんと、人情家の小夜子さん、ふたりが守るその店にはふしぎなアンティークがいっぱい。
そしてそれを買ったお客にはふしぎな出来事が訪れる・・・

Impression

第1話に出てくるもの。
商店街の奥にある古い骨董品店。その中に陳列された値札のないアンティークたち。思い詰めたような表情の女子校生。カレイドスコープ。それを6万8000円で売ろうとする店の主人。シュークリーム。カレイドスコープを680円で売ろうとする店の女性。おまけの猫布団。
第1話についてくるもの。
のほほんとした温かさ。しんみりとした柔らかさ。ちょっとした切なさ。ノスタルジア。
そんなお話が12個入った、ほんのりせつなくほんのり優しい連作短編です。

Episode & Charactor

まぁ、のほほんとしていて放浪癖のあるちょっと不思議な主人・直彦さんと、気っ風のいい甘党お姉さん・小夜子さんもいい味出しているんですが、レギュラーの二人はどちらかというと全編通して脇役が定位置。
ここでは印象的なエピソードをピックアップしながら、ゲストキャラを紹介して行きましょう。
第二話に登場するのはクールな高校生の陸くんと、彼に思いを寄せる千里ちゃん。出てくるのは陸くんのおじいちゃんがアラスカに行ったときに買った「星をつかむ手袋」。クールを貫こうとしながら優しさを垣間見せる陸くんと、彼に無視されても軽くあしらわれても、それでもおしまくる千里ちゃんのコンビネーションがほほえましくていいですね。
第四話は火事で焼け出され「あなろ具屋」にやって来たマミさんと、引き出しの欠けたタンスのお話。育ちの良さと一途さ、芯の強さを併せ持つマミさんがいい味を出してますね。
第八話は雪の中で行き倒れていた美少年・秀一さんと、ふしぎなコートのお話。せつなさとノスタルジアという、この作品の二本柱が上手く出ている、綺麗なファンタジーですね。
第十話は修太朗くんちはるちゃんの超ういういしいカップルと、ローズクオーツのブレスレットのお話。無骨な修太朗くんがちはるちゃんの幸せのために奮闘するエピソードはオーソドックスなんですが、ラスト2ページの落とし方は本作品の真骨頂。ちょっと不思議で、ちょっとあったかい。やさしさにあふれたエピソードですね。

Guide

和み系まったり作品。淡々としているようでちょっとほろりとさせるストーリー。けっこう多くの人に支持されるタイプの作品だと思いますし、それだけのクオリティを備えていると思います。
アップダウンの少ない手軽な作品な上、ストーリーの前後関係もそれほどないので、短編集のように好きなところから、気軽にめくってみるのもいいでしょう。

2002.12