アラタカンガタリ 〜革神語〜

(渡瀬悠宇/小学館少年サンデーコミックス・1〜24巻)

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Story

高校で陰湿ないじめを受け、絶望的な気持ちで街をさまよっていた少年・日ノ原革(あらた)。
古代日本に似た世界「天和国(アマワクニ)」で、秘女王(ヒメオウ)殺しの濡れ衣を着せられた少年・アラタ。
ふたりの少年は世界を交差し、入れ替わってしまう。
革は、古より伝わる剣・劍~(ハヤガミ)を操り、自らに着せられた冤罪を晴らすため、そして秘女王殺しによって解き放たれた劍~を鎮めるために旅立つ。
異世界ファンタジーの名手が放つ、渾身のダイナミック・アドヴェンチャー。

Impression

当サイトで渡瀬作品を紹介するのはこれが6作目。
出世作である中華風ファンタジー「ふしぎ遊戯」、北欧神話風の世界観をもったファンタジー「ありす19th」、時代劇風ハイテンションコメディ「天晴じぱんぐ!」など、世界観からきっちり構築したダイナミックなファンタジーを続々ヒットさせてきた渡瀬さんなわけですが。
ついに大本命とでも言うべき、日本神話風ファンタジーをリリースしてくれました。
しかも、それまでホームとしてきた「少女コミック」系から、少年誌「少年サンデー」に舞台を移して、というのですからこれは期待が高まりますね〜。
事実、わくわくしながらページをめくれば、古墳時代調のシチュエーションはムードたっぷりだし! 敵もシチュエーションもむちゃくちゃ魅力的でぞくぞくするし! コトハちゃんはかわいいし! 仍(なお)ちゃんはかわいいし! いきなり沐浴シーンだし!
ストーリーの方も剣形の神・劍~を操る「鞘」たちの個性、強さ、そして生き様が印象的で、出会うキャラひとりひとりに惹き込まれていく強さがありますし、それに立ち向かう革も実にヒロイック!
少女マンガからやって来た人の作品とは思えないほど、男のコのハートを波状攻撃で揺さぶってくれて、瞬く間に作品世界に引きずり込まれてしまいます。
渡瀬作品に初めて触れる男性読者も、渡瀬作品読んだことあるよ〜という人も満足出来る、渡瀬ワールドの集大成的作品です。

Kotoha

和風ファンタジーといえば、ヒロインはやっぱり黒髪! 和装!
その熱い期待をまったく裏切らない、おだんご髪がチャームポイントの純和風ヒロインです。
「アラタ様」を信じ、どこまでもついていくという一途さと、「アラタ様」のためならどんな危険にも立ち向かって見せるという健気さは、まさに大和撫子の鑑といえるもの。
こんなコに無垢な瞳で見つめられたら、甲斐甲斐しく尽くされちゃったりしたら、そりゃ〜あもう、コロッと参っちゃいますよね〜。
冒険譚の片隅に咲くひとひらの花、旅の合間に吹く軽やかな風……という枠を超えて、しっかりとした存在感を持ってストーリーを彩ってくれる女のコ。
こんな女のコと一緒に旅するためなら、どんな異世界に飛ばされても構いませんし、どんな劍~にも負けたりしませんよ〜!

Guide

少女マンガ家の少年誌進出、ということですが、渡瀬さんの場合もともと少年誌的なノリのよさと、テンションの高さ、ついでにミョーに露出度が高いところが売り物のマンガ家さんでしたから、テンポがよく、あまり違和感は感じませんね。
オリジナルな世界観がわくわくすると感じるか、とっつきにくいと感じるか微妙な部分もありますが、まずは王道の少年系異世界ファンタジーとして、スナオに楽しめる作品だと思います。

2012.3