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(田中メカ/白泉社花とゆめコミックス・1巻〜)

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Story

青年コミック誌「月刊マーチン」の編集者・大友順平には、気になるライヴァルとでも言うべき編集者がいた。
かつて担当した新人の新たな一面を発掘し、雑誌の看板作家の編集もこなす豪腕編集者「水落さん」。
順平が憧れるその編集者、「ヤングビースト」の「水落さん」は、そのタフな仕事ぶりからは想像できないような、クールな美人だった。
田中メカの新境地、マンガ編集者のワーク&ラヴストーリー。

Impression

「お迎えです。」がドラマ化(番組名は「お迎えデス。」)されて俄然注目、田中メカさんの最新作がこちらになります。
これまでは「LaLa」誌でスクールロマンスを中心に描いていた田中さんですが、今回は対象年齢が上の「AneLaLa」誌掲載ということで、ちょっとオトナな恋愛がテーマになっています。
もともと今までも子どもたちの中に存在感のあるオトナを放り込んで、作品の魅力をアップ↑ させていた田中さんですから、メインキャラが社会人となっても心配ご無用。アットホームで優しくてお気楽で、だけどちょっとセンチな田中節はそのままに、明るく前向きなオトナたちが画面狭しと駆け回る、実に楽しいマンガになっているんですね〜。
お仕事にも恋愛にも全力投球なぺーくんと水落さんが、読み手に元気をくれる、そんなマンガ。
「桃野珠子のグラビア」なんて田中ファンをわくわくさせる小ネタも用意されていて、お腹いっぱいなニューカマーです。

Yuko Mizuochi

黒髪のショートカットに切れ長の目、スレンダーな体型に飾り気のない服。いかにも「やり手」と思わせるルックスなのが、本作のヒロイン・水落夕子さん。英知社「ヤングビースト」誌の編集者で、ふたつ名は「完全無欠のサイボーグ」という、見た目通りにクールなワーキングウーマンなのです。
んー、こんなお姐さんにビシビシ笞を入れられたいッッ! とか思っちゃったりもするわけなんですが。が。
意外と照れ屋だったり。
意外と涙もろかったり。
意外とお酒に弱くて、酔うとガードが緩くなっちゃったり。
もういちいち、ギャップ! ギャップ!! ギャップ!!! の連続で、少女マンガのヒロインとは思えないほどに、男性読者のココロをワシヅカミにしてくれちゃうんですね〜。
そしてマンガが好きで、マンガのことになるとやたら熱くなっちゃうし、マンションの部屋ひとつをコミック書庫にしちゃってるし、そんなところも読書男子にはいちいちツボ! ツボ!! ツボ!!!
憧れちゃうけど、守りたくもなっちゃう、まさに理想的なヒロインなのです。

Charactor

本編のヒーローが大友順平。ひょろっとした優男風、いつもにこにこスマイルのいいひと風の受け身キャラ、……と見せかけておいて、意外なまでの恋愛攻撃力の高さを発揮して、ぐいぐい攻めてくるという、なかなかいいギャップを持ったキャラクター。人畜無害なようでいて、恋愛でも仕事でも、やるときはやる、実にヒーローらしい男子です。女性読者ならこのギャップにころっとやられるんでしょうが、男性読者的にも、変身者のヒーローを見るようにカタルシスを味わえる、なかなかステキなヒーローなのです。
いかにもメカ作品のひっかき回し役、という感じの飄々としたオッサンが、マンガ家の猪苗代メグミ先生。吸血鬼忍者アクションと銭湯ハーレムコメディという毛色の違う作品を送り出すヒットメーカーにして、惚れた編集には仁義を通すという熱血漢。ズバッと遠慮のない口調には芯の通ったプロ意識が感じられます。が。その熱さを飄々とした笑顔の下に隠して、水落さんと順平で遊んでいるような人を食ったところがあって、そこが「いい大人だなぁ」と思えちゃうんですよね〜。
この作品のカラーを決定づけているキーマンだと思います。

Guide

掲載誌は替わっても「メカ節」は健在。飄々としていてテンション高くて、ラブとコメのバランスのいいラブコメですね。少女マンガに縁のない男性でも読みやすいのではないかな、と思います。

2016.5