(田中メカ/白泉社花とゆめコミックス・1巻〜)
青年コミック誌「月刊マーチン」の編集者・大友順平には、気になるライヴァルとでも言うべき編集者がいた。
かつて担当した新人の新たな一面を発掘し、雑誌の看板作家の編集もこなす豪腕編集者「水落さん」。
順平が憧れるその編集者、「ヤングビースト」の「水落さん」は、そのタフな仕事ぶりからは想像できないような、クールな美人だった。
田中メカの新境地、マンガ編集者のワーク&ラヴストーリー。
アットホームな雰囲気のある学園ラブコメを描いてきた田中メカさんの新作。「アネララ」誌掲載ということでコミック誌の編集者を主人公に据えた、大人向けの作品で新境地を開拓しています。
とはいえ、編集者という仕事に関するディテールは最低限にとどめられていますし、素直になれないヒロインと肝心なところでヘタレるヒーローというキャラクターバランスも、ふたりが小さなトラブルを解決しながら接近していくストーリー構造も今までの田中作品同様で、これまでの読者もストレスなく楽しめるようになっています。
ヒロイン・夕子とヒーロー・順平の視点を交互に交えて、ふたりの若者の成長を分かりやすく提示してくるあたりはこの作者の達者なところ。
飄々とした味のあるオトナ・猪苗代先生をキーマンに据えて、ロマンスとコメディがスムースに両立しているところにも好感が持てます。
「新境地」とは書きましたが、その中身はむしろ田中作品の「集大成」と言えるもの。
ヴェテランらしい手応えがしっかり詰まった好作品です。
2016.5