(Quro/芳文社まんがタイムKRコミックス・1〜4巻)
姉が生徒会長を務める星咲高校に進学した木ノ幡みらには、高校生になったらかなえたいひとつの夢があった。
それは子供のころ出会った友達と交わした誓い。「小惑星を見つける」ということ。
さっそく天文部に入ろうとしたみらだったが、天文部は部員不足で地質研究会と合併、「地学部」になっていた。
「地学」とひとことで言っても、宇宙の果てから地底のど真ん中まで、ありとあらゆるものが範疇となってしまうわけなんですが、このマンガは「分かりました、全部面倒見ましょう」とどんとこい的な態度で天体観測から地質研究、あるいは地図だったり気象だったり鉱物だったり、子供のころ理科が好きだったヒトや天文図鑑が擦り切れるまで読み返してた皆さんをきっちり引き寄せてくれる、なんとも太っ腹な地学マンガなのです。
もちろん「きらら」レーベルの作品ですからガチで地学をお勉強する! というマンガじゃなくてメインはかわいくて多彩な少女たちの日常。みらとあお、初々しくて百合百合しいメインのふたりを中心とした女子高生たちの日々が描かれるんですが、なにせマニアックな地学好きの集まり、結局なんでも地学に結びついちゃうところが微笑ましくてニヤリと出来るポイントなんですよね〜。
そして何よりの推しポイントが「地質班」「天文班」に分かれていた「地学部」が活動を重ねるごとにお互いを理解して歩み寄ってひとつになっていく姿と、元気だけがとりえだったみらが逞しく、物知りだけれど引っ込み思案だったあおが前向きに、力強く成長していく姿。少女たちが部活を通して成長していく姿が手応え十分に描かれていて、「青春してるな〜」と眩しく見えてくるのです。
地学や百合、あるいはコメディ要素に隠れそうになってますけど、しっかり王道の青春をやってるのがうれしい作品。
巻を追うごとに面白くなっていく一方で、目が離せない作品です!
本編のメインとなるのが、木ノ幡みらちゃんと真中あおちゃんの高校1年生コンビ。
まずは星型の髪飾りがトレードマークのみらちゃんからご紹介いたしましょう。
元気いっぱいな本作品のエンジン役。優等生で生徒会長なお姉ちゃんと比べると……とか言われたりしますが、そんなことは気にしないマイペース娘なのです。地学部の中ではいちおう天文班ということにはなっていますが、地質班の活動にも好奇心いっぱいに飛び込んで見せてこのへん、くじら座の変光星「ミラ」を思わせるところがありますね。
自由闊達な前向きさで分裂しがちな地学部をひとつにまとめる活発娘。このコにかかるとどんな不可能でも乗り越えられそうな気がする、魅力たっぷりなロケットガールです。
その相方となるのが物静かな黒髪ツインテール少女の真中あおちゃん。
何から何までみらちゃんとは対照的な女のコですが、少女時代からの強いきずなで結ばれている女のコなのです。
その「絆」とは「ふたりで小惑星を見つける」という夢。
その夢一途に天文のことを勉強して詳しくなった、静かな中にも熱い気持ちを秘めている一直線な女のコ。物静かで物分かりのいいあおちゃんが、みらちゃんのために、小惑星を探すという夢のために、少しずつ行動力を出して成長していくところはこの作品のハイライト。
その成長を応援せずにはいられなくなる、純粋でひたむきなヒロインです。
地学部の先輩たちもみらあおコンビに負けず劣らずキュートで熱い個性派ぞろい。
地学部長で天文班の森野真理、またの名をモンロー先輩は泣きボクロとグラマラスなボディがトレードマークな本作品のセクシー担当(?)。文化祭でバニーなコスに身を包み、セクシープラネタリウムなんかやっちゃう謎の行動力が魅力の、独特なムードを持ったお姉さんです。
モンロー先輩が若干アレな分、引き締め役となっているのが地学部の副部長で地質班の桜井美景副部長。典型的なツンデレ気質でクールに地学部を引き締めてくれますが、一方で地質や鉱物の話になると熱くなって時がたつのも忘れちゃう、そんな子供っぽくて一途なところがチャームポイントになっています。
地学部唯一の2年生が、地質班の猪瀬舞先輩。先輩だけれど動きがいちいち小動物っぽい愛され先輩で、地学部のマスコット的存在ですね。地質班ではありますが興味があるのは「地図」ということで、同じく地図好きな私としてはかなりシンクロできちゃうキャラクターだったりします。
地学部メンバーではありませんが忘れちゃいけないのがみらちゃんの幼なじみにしてクラスメート、そしてスズヤベーカリーの看板娘・鈴矢萌ちゃん。マジメっ娘の多い地学部の中に交じってほどよく場をひっかきまわしてくれるムードメーカーですね。看板娘をやっているだけあって根はしっかり者。みら&あおを陰日向に支える名脇役でもあります。
微百合のフレーバーを漂わせつつ、JKがキャッキャウフフする日常を描いた、典型的な「きらら」作品で、このサイトを贔屓にしてくださる方ならしっかり楽しめると思います。
ただ、地学ネタは豊富。高校生たちにとって身近で手が届く、「日常の中の地学」がほとんどなのでとっつきやすくはありますが、バリバリの地学好きの方には子供だましに見えるでしょうし、理系アレルギーの方には楽しめないかもしれません。
2021.7