(椎名あゆみ/集英社りぼんマスコットコミックス・全2巻)
父は失踪中。母は頼り無く、妹は引きこもりがち。崩れそうな家庭を支えようとバイトを重ねる望月美咲の生き甲斐は、クラスメート・武藤の笑顔を見ること。
しかし、バランスを保っていた彼女の日常は、武藤をライバル視する「王子」、速水が美咲に関心を示したことをきっかけに動き出す。
四人の少年少女の思いが急展開で交錯する、どまんなかのハイスクール・ラブドラマ。
さ〜あ、ついて来れるかな〜?
という感じで、読者を翻弄する感じのジェットコースター・ラブストーリーです。
展開の早さは「りぼん」のお家芸ではありますが、この作品は出色。美咲、武藤、栗りん、速水、ふたりの女のコとふたりの男のコの恋愛ベクトルがめまぐるしく動いて、とにかく次が予測できないようなハイテンポさ。こう書くと、青年誌あたりにありがちな男女とっかえひっかえのカル〜い恋愛ものみたいですが、この作品の場合、その想いは思春期らしい振幅を孕んだ真剣な想いだから、その甘酸っぱさにページをめくってしまうんですよね。
感情移入しやすいタフなヒロイン、美咲ちゃんの魅力もあって、カルさは感じられず、しっかりとした初恋ストーリー、という印象に仕上がっています。
胸元を厳しく抉ってくるような剛速直球恋愛物語。淡いけれどヤケドしそうな真剣な恋のメリーゴーランド。
恋愛コミックのニュースタンダードとなりそうな注目の作品です。
椎名作品からまたも誕生したタフ系ヒロイン。望月美咲ちゃん。
初登場でいきなり机につっぷして居眠り。で、先生から説教。
ちょっと強気なボケキャラ?という第一印象が残るんですが、そのあとで、武藤くんの笑顔を見ただけで頬を染めたり、みんなの前で武藤くんの魅力を力説してみたりして、純真な恋する乙女っぷりを披露。
でも、ま、ここまでならフツーの少女マンガのヒロイン。しかし美咲ちゃんはそれにとどまらず、純真さを際立たせるツインテールを解き、ルージュをひいて夜の街へ。ポニーテールのバーテンダー姿(爆萌)という第三の顔を見せてくれるのです。
実は彼女、借金を残して消えた父親の代わりに、夜の街で働いてお金を稼いでいるんですね。
そのあとも家庭内の不和がつきつけられたりして、ただの純真系ヒロインじゃないぞー、ってとこが見えてくるんです。
歯を食いしばって生きるけなげさ。武藤くんや速水の一挙手一投足に心動かされる純真さ。
その二面性をきっちり同居させて前を向くタフさが、しっかり胸の中に響いてくるヒロインです。
セカンドヒロインといえる存在が栗りんこと、スーパーAクラス美少女・栗原ゆかりちゃん。
少しカールした感じのショートカットに、明るい笑顔、大きな瞳。確かに「天使のコスプレさせてでっかい鳥カゴの中で」飼いたくなるようなちょいろり風味の美少女っぷり。頬を染めた表情、とびっきりの笑顔がほんとにかわいくて、も、も、も・・・・・・・萌えます。ちょっと敵役っぽい役回りだけど、いーの。許す。かわいいから。
「凡人」武藤についてはさらっと流して、セカンドヒーロー・速水もなかなか気になるキャラクターです。「女の子にもてることそれはボクのイ・キ・ガ・イ」なんて言って、裏表のあるタフなキャラクターを披露。いい根性してます。こーゆーキャラ、好きなんですよねー。
余談ながら黒髪ショートカットクール娘・佐田ちゃんが今後どうストーリーに絡んでくるのか、そのへんも注目してたりして。
展開はかなりハイピッチ。コメディ要素はあるものの主眼は恋愛ドラマで、ヒロインも同世代の女性読者にはなじみやすそうですが、それ以外となるとどーかなー、という部分があります。
ある程度少女マンガになじみがあって、キャラクターを追う形で楽しめる、中級者以上向きの作品ですね。
2003.6