(椎名あゆみ/集英社りぼんマスコットコミックス・全2巻)
父は失踪中。母は頼り無く、妹は引きこもりがち。崩れそうな家庭を支えようとバイトを重ねる望月美咲の生き甲斐は、クラスメート・武藤の笑顔を見ること。
しかし、バランスを保っていた彼女の日常は、武藤をライバル視する「王子」、速水が美咲に関心を示したことをきっかけに動き出す。
四人の少年少女の思いが急展開で交錯する、どまんなかのハイスクール・ラブドラマ。
四人の少年少女の、交錯する恋愛感情を描いた学園ものです。
めげないヒロイン・美咲のキャラクターが前面に押し出された明るいムードの作品なので目立ちませんが、男の独占欲、女の嫉妬といったマイナスイメージのテーマもしっかりと描かれており、あっけらかんとしたラブコメや青春群像ものとは一線を画した、読み込める作品になっています。
もうひとつ注目したいのは展開の速さ。スピーディーな展開は「りぼん」作品のお家芸ですが、この作品でも四人のメインキャラの恋愛ベクトルがさまざまに揺れ動き、読者に挑戦してるかのようなハイテンポで状況が動いて行きます。
それが思春期入り口の不安定さを描くとともに、作品全体にからっとした爽やかな印象を与えるのに寄与しており、椎名さんの筆力もあって、テンポに巻き込まれるのが心地いいと思えるような、独特の読後感が感じられます。
萌えやコメディに頼らず、展開とキャラクターで勝負する正統派の学園恋愛ものとして、注目したい作品です。
2003.6