(藤崎真緒/白泉社花とゆめコミックス・全1巻)
冬の高原。祖母が管理する別荘を手伝っていた高津考司は、ビスクドールの撮影のために別荘を訪れた人形作家、近江上総らのグループと知り合う。
その中で考司が惹かれたのは、雪のように白い肌と流れるような髪の美少女。「姫」と呼ばれるその少女−冬姫はまさに、生きた人形のようだった。それもそのはず、冬姫はビスクドールたちのモデルであり、自身もまた、上総のために13歳から成長を止めているというのだ・・・
藤崎さんの新作はビスクドールをテーマにした三部作。
「お星様にお願いっ!」「ひなた120%」の元気っ娘路線からはちょっと外れた、ちょっとミステリアスな雰囲気漂うストーリー系作品。
とはいえ、ヒロインの魅力を全開放出させる藤崎さんの得意技はこの作品でも生かされていて、黒髪ミステリアス少女・冬姫ちゃんの謎めいた表情と、ツインテール眼鏡っ子お嬢様・桜ちゃんのまっすぐな魅力がぐいぐい作品を引っ張ってくれます。
ビスクドールに封じ込められた彼女たちの想いが、考司によって封印を解かれ、冬姫ちゃんが、桜ちゃんが、自分がほんとうに手に入れたかったことに気づく、そんなストーリーは魅力十分。
だから、恋愛要素が薄くとも、十分に胸ときめかせることができる作品なのです。1冊3話とボリュームもたっぷり読みごたえ十分。人形たちが誘うメルヘンの世界が広がる作品です。
白磁のような肌に、流れるような黒髪。これだけでご飯3倍は軽いよ!という方もいるかと思いますが、冬姫ちゃんはそんな感じの美少女。
「姫」の呼び名にふさわしい、小憎たらしいほどにノーブルな態度、
「上総のものになるために」13歳の時から成長を止めた身体、
水や雪を嫌う性癖、無表情の中に烈しさを秘めた気性。
黒髪と美貌に似合った、ミステリアスな要素てんこもりのヒロインです。
この作品は少女マンガでありながら、主人公は高津考司少年なので、「姫」に関しても彼の視点から語られていて、そのへんがまたミステリアスさを倍加させ、「人形のような」彼女の存在感が際立ってくるんですよね。
読者を引きつけ、絡め捕ってしまうような魅力を持ったヒロイン。その誘惑には、逆らうことが出来ませんね。
三部作の第2話、「朧月夜に会いましょう」のヒロインが新見桜ちゃん。冬姫ちゃんと対をなすような、春らしい名前に似合った明るい眼鏡っコです。
何不自由なく育てられたお嬢様でありながら、しっかり者で行動派。こういう前向きな女のコって、見ていて気持ちいいですよねー。冬姫ちゃんのような、圧倒的な魅力はないけれども、しっかり存在感を発揮しています。
第1話、「冬薔薇姫」の語り手が高津考司くん。少女マンガで男のコ主人公って珍しいですよねー。しかも美形タイプじゃなくて、好感持てるような、いい人タイプの好青年で、ちょっとかわいい感じです。なにげにパーフェクトなキャラクターに見えて、その実若さが先走っちゃうところなんか、男性読者にもシンクロしやすい主人公です。
少女マンガではありますが、恋愛系の爆甘ムードはあまり感じられません。ミステリアスなムードと、藤崎作品らしいキャラクター中心のポップなストーリー運びの融合を楽しむ方向で読みましょう。
しっとりムード+男のコ主人公ということで、比較的男性読者にもなじみやすいかな。特に黒髪萌えの方なら冬姫ちゃんは要チェックですよ〜。藤崎作品らしく、しっかりハダカも出てくるし(笑)。
2004.3