(藤崎真緒/白泉社花とゆめコミックス・全1巻)
冬の高原。祖母が管理する別荘を手伝っていた高津考司は、ビスクドールの撮影のために別荘を訪れた人形作家、近江上総らのグループと知り合う。
その中で考司が惹かれたのは、雪のように白い肌と流れるような髪の美少女。「姫」と呼ばれるその少女−冬姫はまさに、生きた人形のようだった。それもそのはず、冬姫はビスクドールたちのモデルであり、自身もまた、上総のために13歳から成長を止めているというのだ・・・
ビスクドールをテーマにした作品で、短編3作でひとつの作品になっています。
1巻で3話のボリューム、ひとつひとつのエピソードが豊かに描き込まれており、さらに「冬薔薇姫」の主人公を考司、続く「朧月夜に会いましょう」を新見桜、ラストの「宵待草は謳う」を冬姫と、目先を変えることで、作品軸である冬姫のキャラクターを上手く浮かび上がらせたり、少女マンガ的なハッピーエンドを主眼とせず、少女の殻を破ろうとする冬姫の姿をメインテーマに持って来たりと、通常の長編連載では出来ない展開を見せて、作品に厚みを加えています。
ビスクドールという小道具を冬姫という少女と対にすることで、少女の成長というテーマを鮮烈に浮かび上がらせると共に、女性読者が憧れるような華やかでファンタジックなムードを紡ぎ上げており、そこに藤崎さんらしい軽快なストーリー運びが加わって、音楽的な滑らかさと重奏性を持った、印象深い作品になっています。
2004.3