ガッチャガチャ

(橘裕/白泉社花とゆめコミックス・全8巻)

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Story

室井友里は恋に生きる女。だけど男運が悪く、恋に恵まれない女。
11人目の男に12回目の浮気をされ13回目のデートでフラれた友里はその現場を美少女・神楽坂素子に見られてしまう。
素子は見た目通りの美少女ではなく「美少女の皮をかぶったオッサン」。それを知ってしまった友里は修羅場を見られたことを素子に脅され、いつの間にか彼女とつるむ羽目に・・・
矢部、平尾、ふたりのダメ男もからんで、「どーしよーもない高校生」たちが繰り広げるハイテンション・ラブコメディ。

Impression

かわいい絵柄とストーリーテリングの巧さで当サイトでもイチオシの橘裕さんの「アクティブLOVEコメディ」。
フラれてもフラれてもめげずに新しい恋を追うタフな高校生・友里と、触れれば血しぶき飛ぶような武闘派美少女・素子のダブルヒロインに、登場するときはチンピラに追われてるか女に追われてるかして逃げてるときというロクデナシの矢部、友里に片思いしながらも、告白のチャンスを失い続けるヘタレ生徒会長・平尾のダブルヒーロー。
濃いキャラクターばっかりのところ素子・矢部の過去に関わる美少女「可菜子」がじっとりと絡んで来て、なんとも読み所満点の作品です。
どのキャラも完璧に見えて、実は心のどこか大事な部分が一カ所欠けてたりする、そんなキャラばかりなので、その空疎感やもどかしさがぐっとキャラを読み手に近づけてくれるんですね。そこにタイミングよくコメディ要素が入ってくるから、ボリュームたっぷりなのにさくさく読めちゃう。
友里に萌え、素子に笑い、可菜子に感じて、矢部に呆れて平尾に同情する。そんな調子でラブもコメディもたっぷり楽しめる作品です。そして、恋する勇気をくれる、そんな作品ですね。

Yuuri Muroi

黒髪ショートカット元気系高校生by橘裕。
これは最っ強のヒロインと言っても過言じゃないでしょう。
作者曰く少女マンガには珍しい汚れ系ヒロイン。浮気症、ギャンブラー、暴力男に果てはクスリ漬けと、ロクでもない男とつきあっては分かれる繰り返しの恋愛不全体質。さらに今度惚れたのもロクデナシの矢部先輩。
・・・こう書くと、「いくらなんでもな〜、そんな汚れたヒロインじゃな〜」と一歩引いてしまいそうなんですが。
彼女の行動原理になっているのは、幸せになりたいというごく当たり前の願い。そのためにはいくら振られても、踏まれても立ち直って歩き出す、ピュアでタフなヒロインなのですね。純愛系のヒロインとは一線を画した独特のキャラなんだけど、やっぱりその原動力となっているのはピュアな乙女心なわけで。
ある意味、男の願望をカタチにしました〜みたいな処女系ヒロインよりずっと存在感があって、そのたくましさが愛しく思えるような独特の存在感がありますね。

Charactor

この作品のもうひとつのパワーユニット、それが神楽坂素子。パワーユニットというより物語の恋愛関係をいいように掻き回す、壊れたステアリングですね。
長身に素直なロングヘアーが魅力的な美少女ですが、猪木詩集を愛読し、生脚ウォッチングを楽しみとし、オマリーの六甲おろしを愛聴し、そしてとにかく暴力的。彼女の通る道には血の雨が降るという超絶武闘派少女なのです。その行動はいつも雄々しく男性的。いや、キャラに個性をつけるのは結構なんだけど、ギャグ作品じゃあるまいし、なにもそこまでやらなくても〜のやり過ぎ感が清々しい、そんなヒロインです。
もひとり注目は平尾匠。黒髪に眼鏡が実にクールな生徒会長、袴姿もキリリと決まった剣道部員。まさに少女マンガの王道ヒーローのようなスペックを持ったキャラクター。
なんですが。
友里に惚れているのにチャンスをみすみす逃して告れないヘタレっぷりが毎回炸裂。見せ場寸前まで行くのにおいしいところはみ〜んな素子と矢部に持っていかれて、情けなさド炸裂。
なんか、かっこいーのに妙に男性読者に同情されそうなステキなキャラクターです。
いやあ、ガッチャガチャ一番の楽しみがこの平尾の空回りっぷりだったりして。

Guide

かわいい系+学園ラブコメ+ハイテンション+魅力的なキャラクターと、当サイト的にイチオシ要素の揃った作品。
このサイトによく来てくれる方なら、文句なく楽しめるのではないかな、と思います。
シリアスなシーンもありますがさほど重くはなく、ノリとビジュアルで楽しめます。

2003.10