(小森チヒロ/小学館ちゃおコミックス・1〜3巻)
神社の娘・詠は、縁結びの神社なのに縁切り神社呼ばわりされ、心霊スポット扱いされている神社を盛り上げたいと願っている。
そんな詠はある日、拝殿の中を改装してくつろいでいる神様と出会う。
詠は神社を縁結びの神社として盛り上げるべく、神様とのラブラブ写真(ヤラセ)を撮ってSNSに発信して宣伝する、という作戦を思いつくが……。
いやー、かわいい面白いかわいい面白い。語彙がふたつだけになってシンプルに楽しめるコメディ作品の登場です。
なにが面白いって、思い付きだけで行動するのに肝心なところではテンパっちゃう純粋少女・詠ちゃんと、それをからかって楽しむダル系和装男子な神様のかけあい。
詠ちゃんが「縁切り神社」と風評被害を立てられた神社を本来の「縁結び神社」として盛り上げるために、SNSでカップル写真をデッチ上げよう! とあさってなことを思いついたのが事の発端。
で、詠ちゃんがSNSで映えそうなカップルシチュを提案→神様が面倒くさがって拒否→食い下がる詠ちゃん→神様がからかって詠ちゃんに急接近→真っ赤になって照れる詠ちゃんというのが黄金のワンパターンなんですが、神様の行動原理が「韓ドラのシーズン2が配信されるから」とか「二日酔い」とか神様にあるまじきものばかりだし、詠ちゃんは真っ赤になってばかりだし、いい感じにかみ合ってなくてそこがかわいい面白いかわいい面白いと笑い転げてしまうポイントなんですよね〜。
読者の期待を軽やかにかわしてみせる神様のアヴァンギャルドさと、読者の予想にしっかり応えてくれる詠ちゃんの純粋っぷりがいいコントラストになっている、コント感抜群のコメディなのです。
本編のヒロインが、にぱっとした笑顔がキュートな日野崎詠ちゃん。巫女服でも着せたら似合いそうな、純真度100%の黒髪女子、神社の娘さんです。
そんな詠ちゃんを端的に表すと、「ちょっとおバカな女のコ」になっちゃいますかね〜。
「縁切り神社」とあらぬ噂を立てられている神社を盛り上げようとしていますが、そのきっかけが「おこづかいがほしいから」だったり。
SNSを駆使して「縁結びの神様」としてのご利益をアピールすべく、「ラブラブ写真を撮ろう」とか「カップルコーデ写真を撮ろう」とか言いだしたわりに、肝心のところでヘタレたり、そんなところがなんとも残念で、そんなところがなんともかわいいんですよね〜。
神様ならずともからかいたくなってしまう純粋少女。
それでいてツッコミの切れ味が鋭いところもまた魅力だったりします。
この作品のもうひとりの主人公と言えるのが神様。
……なんですが、なんとも神様らしくないキャラなんですよね〜。
どのへんが神様らしくないかっていうと、まぁ、ひとことで言ってチャラい。
「今どき恋愛ばかりが人生じゃないでしょ」なんて縁結びの神様にあるまじき、こじらせた絶食系男子みたいなことも言っちゃうし、拝殿の中にはヨギボーおいて、間接照明置いて、Lo-Fiヒップホップ流してなんかチルな快適空間にしちゃってるし、なんかやる気が感じられなくて、そりゃまぁ、縁結びの神様のはずが縁切りと呼ばれるようになってるのも納得だよな〜、とか思っちゃったり。
詠ちゃんの真剣な(だいぶあさっての方を向いちゃってるけど)お願いもあっさりとかわしてからかってみせたりで、なんともつかみどころがない男のコなのです。なんなんでしょうね、この神様。
だけどそう見えて、「大事にされたら返してあげたくなるものなんだよ」なんて誠実なところを見せてくれるのが神様のいいところ。
熱暴走しがちな詠ちゃんをクールにサポートする、やっぱり頼れる神様なのです。
2023.8