(卯花つかさ/芳文社マンガタイムKRコミックス・1〜2巻)
お嬢様学校の鳳女学院に入学した冴だったが、クラスに溶け込むことが出来ず、昼休みは人気のない裏庭でひとり、覚えたての麻雀アプリを楽しむ日々。
しかしその裏庭に、トップオブお嬢さまの千星がやってきて、麻雀に興味を示したことから冴の静かな日常が一変する。
麻雀初心者の、戸惑いつつもわくわくする姿を描いた、麻雀×お嬢様×四コマという新機軸!
麻雀と言えばオッサンの娯楽、という先入観が昭和世代にはありまして。
そういえば社宅に住んでいた子供のころ、父親が同僚を家に呼び、紫煙漂う部屋で一晩じゅうジャラジャラと牌をかき混ぜる音をさせていた記憶がありますし、長じて自分がオッサンになってからは社員旅行先の浅間温泉で、同僚や上司とビール呑みつつ卓を囲んで倍満振り込んでたりしたんですが。
令和の麻雀って、こんなにキュートだったんですね〜〜〜〜〜〜!
そんなわけで「きらら」でJKが麻雀やるマンガが始まったときには、「いくらなんでもそんな無茶な」と思ったりしたわけですが。
全然ありですね、JKが麻雀。
Mリーグに代表される令和の麻雀は賭けとも煙草ともビールとも無縁な知的で熱い娯楽だそうですがそれとは一線を画し、もちろん煙草の臭いとアルコールに塗れた昭和の麻雀とも違う、まあ端的に言えば“麻雀”というアプリゲームを楽しんでいるだけのJKの日常。その日常感がなんともかわいらしくて、眺めているだけで癒されるのです。
はしゃぎながら麻雀を楽しみつつ、ひとつひとつのことを覚えるたびに麻雀に夢中に……というかズブズブになってくJKを眺めるのはかわいらしくて眼福ですし、アプリ内の、けもみみ付きのアバターたちの姿もまたかわいらしくて眼福。
難しいこと考えなくても、麻雀って楽しいよ、って言われているような気がして、昭和世代も久々に牌をつまもうかな、って気分にさせられちゃう、そんな四コマです。
……麻雀はボケ防止にもいいって聞きますからね。
当作品のヒロインが北王子冴ちゃん、高校1年生。
お嬢様学校の鳳女学院に入ったはいいけれど、周囲とはうまくなじめず、昼休みにはひとりぼっちという学園生活を送っている女のコなんですが。
だけど寂しくなんてありません。
なぜなら。冴ちゃんには、麻・雀・が・あ・る・か・ら。
昼休みは裏庭に行き、アプリ麻雀を楽しんでいるという、それでいいのか的なJKライフを送っているのです。
麻雀が好きと言っても覚えたてで、点数計算どころか麻雀用語も覚束ないし、麻雀やりながらだと会話とか他のことは全然できないしで、シロート感満載。だけどそこが、麻雀(に限らず趣味全般に言えることですが)を好きになって、スポンジが水を吸い込むがごとく日に日に新しいことを覚えて、日に日に夢中になっていく、そんな初心者ならではのわくわく感につながっていて、「あー、わかるわかる、自分も昔こうだったわー」「あー、わかるわかる、そうして気づいたら沼にはまり込んで抜け出せなくなってるんだわー」と、共感度1000%のヒロインになっているのです。
どんなことでも麻雀に結びつけて考え、元気がなくてしおしおになっていても麻雀が与えられると元気になる、麻雀ジャンキーっぷりもこのコのチャームポイント。
引っ込み思案の麻雀バカでありながら、千星の前では頼れる王子様になる瞬間もあったりして、そんなギャップもまた冴ちゃんの魅力ですね。
本編のもうひとりのヒロインが、神南千星ちゃん。
庶民ッ気の強い麻雀中毒の冴ちゃんとは対照的な名門の出自、「鳳の星」という二つ名を持ち、朝のご挨拶のために生徒が列をなすという、みんなの憧れのお嬢様なのです。
いかにも育ちの良さが伝わってくるような、天真爛漫で恐れ知らずのところがなんとも魅力的。表情に出やすすぎて、こんなコが麻雀やって大丈夫なんじゃろかと思わないでもないですが、そんなところがのびのび育ったお嬢様らしくて愛らしいんですよね〜。
なにげに負けず嫌いでなにげにあおり属性なところもチャームポイントだと思います。
西園寺乃々花ちゃんは恋に恋する……というか百合に恋する年頃の女のコ。冴×千星カップルを陰日向に支えつつ見守る、百合に挟まるお嬢様というか、読者の代弁者のようなポジションのクラスメイトなのです。
本作品のヒロインの中でも間違いなくトップクラスにドシロート。初心者全開なところがなんとも初々しい、好感度抜群のお嬢様です。
遅れて登場は純礼(当然苗字に“東”がつくんだと思うけど、苗字出てたかな?)ちゃん。中等部に在籍する年下の妹分ですが、4人の中で唯一リアルに雀牌持って麻雀打ったことがあって、点数計算も出来るという、断然の実力者。ですが乃々花ちゃんにぞっこんすぎて、乃々花ちゃんのことは全肯定、乃々花ちゃんのことになるとあっさりと残念キャラになってしまう、4人の中でも断然のダメ人間だったりします。
クールなのに、実力者なのに、そこが残念! というなんとも愛すべきポンコツキャラなのです。
2024.9