花ざかりの君たちへ

(中条比紗也/白泉社花とゆめコミックス・全23巻)

この作品はTAKAJAさんからの紹介を頂きました。

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Story

芦屋瑞稀は憧れのハイジャンパー・佐野泉に会いたい一心で、単身米国から帰国、彼の通う男子校・桜咲(おうさか)学園に男装して転入を果たす。
運命か偶然かはたまたお約束か、泉と同じクラスになり、そればかりか寮でも相部屋になって満願成就の瑞稀だったが、狼の園に小羊一匹、にぎやかで個性的な寮生に囲まれた瑞稀の学園生活は楽しいながらもドキドキのハプニングが連続。
しかし最大のハプニングは、泉が高飛びをやめていたことだった・・・

Impression

以前から上記2名の方々のオススメをいただいてまして、私自身も雑誌連載で楽しんでいた作品なんですが、「びぜんや大阪移住記念!」ってなわけで、いよいよ堂々推薦となりました。
え?なぜ大阪移住記念が「花君」かって?
それはカンタン。ヒロイン・芦屋瑞稀を筆頭に、相手役の佐野泉、中津、梅田、萱島、千里・・・キャラクターの名前に関西の地名がてんこ盛りなんですね。舞台も桜咲学園と書いて、「おおさかがくえん」と読むんだな、これが(笑)。
もちろん注目点はネーミングセンスのみではなく、豊富な美形キャラ&中性的な愛らしさが魅力の瑞稀ちゃんがおりなす、ドタバタコメディ風味の、ドキドキストーリーがこそばゆくって面白いんですよねー。
学園のさまざまな出来事を、豊富で個性的なキャラクターを生かしてぴちぴち鮮やかにえがきつつ、締めるところではしっかりドラマする、そんな剛柔使い分けた展開にじわじわっ、とハマって行くのです。ロングセラーであることが納得できるような、イキのいい学園ストーリー。笑いも萌えも泣きもしっかり備えた、お得なバリューセット作品です。

Mizuki Ashiya

女装少年をいろいろ紹介してきたりなんかしてきた「3:31a.m.」ですが、たまには男装少女もいいでしょ?ってなわけで、芦屋瑞稀ちゃんの紹介なのですよ〜っ。
瑞稀ちゃんの魅力をひとことで言い表すなら、「中性的な魅力」。ふたことで言い表すと、「スリムでボーイッシュな少年系キャラの魅力と、恋する乙女の表情のいいとこどり」。言い換えれば、一粒で二度おいしい、アーモンドグリコのようなヒロインなんですね。だから、美少女萌え〜なあやしい男性読者から、「花とゆめの」メイン読者たる恋する乙女、さらにはディープに少女マンガを楽しむ、美少年同士のあれこれが大好きなコアな(?)女性ファンまで、広範囲な読者をしっかりばっちりこってりたっぷり悩殺してくれるのです。
「憧れのアスリートを追って男装して来日し、果ては男子寮の同じ部屋に入ってしまった」などという無理無茶無謀な設定を背負いながら、けしてぶっ飛んだ非常識ヤンキーウェポン娘などではなく、一途に忍ぶ恋を貫く、絶滅危惧種の大和撫子的ハートを貫く姿もいじらしく、かつ感情移入しやすくて○ですね。

Charactor

ヒロイン・瑞稀ちゃんは設定の割りにはフツーの女の子。
しかし、しかし、しかぁし。この作品は脇役が濃くてにぎやか。え?脇役は野郎ばっかりだ?そんなことは気にすんな。個性派男性脇役陣、堂々の紹介に参ります!
まず小手調べは(佐野はフツーでつまらないので)中津秀一から。関西弁金髪。いきなりインパクトが炸裂してる気がしますが、さらに瑞稀ちゃんに(男と信じ込みながら)ベタボレなんですな〜。行ってはいけない禁じられた恋の道と知りつつも、ためらいつつも、その茨の道に敢然と足を踏み入れるその蛮勇に拍手。側から見てるとアホにしか見えません。しかし、歩むべきではないと知りつつも泥沼にはまっていく、それもまた男の生きざま。彼の一挙手一投足が、1ccの涙と、80ホンの大爆笑を読み手にもたらしてくれます。
つづいては「花君」イロモノ脇役陣の中でも、当初から紫色のオーラを放ち、いい味出してるのがマッド校医梅田北斗。マッドなのでもちろんさそり座。白衣でゲイ。で、ぶっきらぼうだけどいいひと風。とにかく、おいしい要素を白衣の中にぎっしり押し込んだ、幕の内弁当のようなキャラクターです。家族がまたキャラ立ってるんだな、これが。この作品で、ある意味もっとも目立ってるキャラクターかもしれません。
イロモノと言えば、第三寮寮長、オスカー・M・姫島こと、姫島正夫。いつもバックに花と光をまとうその姿はまさにオスカー。オスカーと言ったらオスカー。その軽いキャラもあって、とにかく悪目立ちしてます。ストーリーの中でどういう役割を果たしたとか、そーゆー印象は全然まったくさっぱりないんですが、ビジュアルインパクトが脳裏に灼きついて離れません。
さらに野郎紹介を懲りずに続ければ、霊感少年・萱島大樹もストーリーにまともに絡んでくることはないのに、中津のオーラから彼の思考パターンを覗くという、イロモノ度120%の必殺技で印象十分。
イロモノが続いたので最後はかわいい系キャラで〆ましょう。空手部の門真将太郎。ええ、かわいい系といえどもオトコです。例によって、ストーリーに絡んでくるわけでもありません。しかしショタ系のルックスが、むさい男どもの中では一陣の涼風になるのですよ。

Guide

えー。
思いも寄らず、ヒロイン・瑞稀ちゃんの紹介を圧倒的にしのぐ文章量で脇役陣を紹介してしまった(正直あれでもまだ紹介したりないのです)ぐらい、さまざまなサブキャラが目立つ作品。作品の中身は同じ所を堂々巡りするような、学園軽ラブコメといった感じで、やや個性に欠けるだけに、この大量のキャラクターが創り出す賑やかな雰囲気を楽しめるかどうかが天下の分かれ目。キャラの顔と名前を覚えるのが苦手な人は厳しいかも・・・ですね。男ばっかりだし。
一方、この作品の雰囲気を楽しめる人には、ビジュアルブックやCDドラマなども用意されてます。以前の発売なので新品で手に入れるのは難しいかも知れませんが、興味のあるかたは探してみては?

2002.7