（織田綺／小学館少コミフラワーコミックス・全３巻）
活発快活な少女・鈴は大富豪である箔宝燕家当主が愛人に産ませた子供。その当主が亡くなり、父の遺言に従うかたちで、４兆円の資産の後継者となった鈴だが、もちろん箔宝燕家の一族たちはそれを快く思わず、鈴は命すら狙われる始末。
父から鈴のボディーガードを任されたという宗方虎之介と、守り役を任された亜門鷹司の機転で危機を脱した鈴は、鷹司の言葉に従い、自分の身を守るために「一族の中から結婚相手を見つける」と宣言するが・・・
美少女わんさか系ラブコメを折に触れて紹介してる当サイトですが、たまにはこんな作品を紹介してもいいでしょう。シャープな絵柄とセリフのセンスが素敵な織田綺さんの、美少年わんさか系ラブコメです。
熱血ボディーガードの宗方虎之介と、得体の知れないベビーフェイス・亜門鷹司のコンビを中心に、これでもか、これでもかと美少年達がフェロモン放出をするという、男性が大勢を占める当サイトのお客様の中で、何人がこの文章を見て関心を持つのか不安になるよーな系統の作品。
しかし、シリアスもギャグもひとりでこなす虎之介をはじめ、ひとクセあるキャラクターばかりが揃っていて、なかなかいい味を出している作品なんです。メリハリのある展開、洗練された画面にヒロイン・鈴ちゃんのストレートな魅力がミックスされ、ストレートにテンポよく楽しめる軽コメディ。コメディ要素を抑えて、あくまでドラマで勝負してくれるあたりが、深みがあって面白いという、いい作品バランスを見せてくれます。
金箔の「箔」！宝石の「宝」！燕の巣スープの「燕」！ゴージャスな苗字のヒロインですね。
しかしてその実態はというと、ゴージャスお嬢様！ではなく、ごくフツーの１５歳。
あまりにもフツーっぽいので、虎・鷹コンビをはじめとする豪華男性陣の中で埋もれてしまっている気がしないでもないですが、まぁ、その辺は気にせずに。・・・ほかに萌えるキャラクターもいないですしね（笑）。
強気で健気な鈴ちゃんなので、どーしても片眉つり上げた表情や眉間にしわ寄せた表情ばっかりなんですが、そこに鈴ちゃんの芯の強さが現れているようで、なかなかのチャームポイント。画面を締める黒髪ロングの容姿と会わせて、ぴしっとストーリーを引き締めてくれる、いいキャラクターでもあります。
思春期の女のコらしい危うさを抱えながらも、自分を失わない芯の強さを秘めたヒロイン。目立たない、フツーなんて言ってみながら、読み進めるうちにしっかりと鈴ちゃんの魅力のトリコになってしまいます。
鈴ちゃんを除けばこれといった女性キャラの出てこないこの作品、他のキャラクターは紹介せずにさっさと次に移りたい気がしないでもないですが、さすがに「萌え狙い」の作品だけあって、男性キャラもなかなか無視できない個性を持ってるんですよね。ってなわけで紹介に突入〜
やはり筆頭は「虎」こと宗方虎之介でしょうね。このテの話に欠かせない堅物ボディーガードなわけで、楽しみたいのは野性味を残したルックスとそれに似合った石頭っぷり。鈴とのやりとりがいいコメディー要素になっていていいんですよねー。純情可憐な虎にカンパイ。
個人的には人を食ったような道化役「鷹」こと亜門鷹司の方が好みですが。こういう、腹黒そうなキャラクターというのは見ていて楽しいですね。
男性に人気が出るとすれば好漢・天馬明良かなぁ。天真爛漫な野生児という感じで。どうにも不思議なセンスを抱えてるあたりもまたナイスガイな感じです。
美少年続出の学園少女マンガ、というあたりが当ＨＰの男性を中心とお客様にはどーかな？という面がないでもないですが、その辺を気にしなければ、なかなかいけるはず。
絵柄的にもクセが少なく見やすい感じですし、大ゴマ中心に見やすい画面なので、さくさくと読み進められると思います。キャラクターにのめりこむより、ノリで読んでいく方が楽しめるでしょう。
２００１．１０