Heaven?

(佐々木倫子/小学館ビッグスピリッツコミックススペシャル・全6巻)

ノーマルモードへ

Story

一流フレンチレストランのサービスマン・伊賀観は、謎の美女・黒須仮名子の誘いを受けて、彼女のレストラン「ロワン・ディシー」に入る。・・・とはいえあまりの無愛想さにクビ同然だったが・・・
しかし伊賀がその店にやって来るとその店は今だ未完成、立地は最悪、オーナーはいいかげん、さらにフロア従業員でフレンチの経験者は伊賀ひとりの八方塞がり。
その名も「この世の果て」という店は、果して無事に開店するのか。開店してもやって行けるのか・・・

Impression

なんつーか。
不思議な作品ですね。あははーっ。
困難な状況、頼り無い周囲、それを解決していく主人公、プラス業種独自のディテール、というのは青年誌の王道のひとつですが、うーん、この作品・・・その王道を押さえながら、王道的な雰囲気が・・・ぜんぜんないんですよねー。
問題を解決した爽快感を楽しむというよりは、問題をやり過ごした安堵感を楽しむという感じで、うーん、社会人的にはこっちの方がリアルかも。
でも、コミック紹介サイトの管理者としては、にははっと笑ってごまかすしかない、どこがいいのかわからない困った作品だったりします。ちうか・・・コミック紹介サイトの管理者を困難に追い込む作品ですね。
でも、読んでみると、なんか安らぐ。そして面白い。前向いてがむしゃらに進むだけが人生じゃないぞ、と思わせるような、ナ〜イスな作品です。

Kan Iga

無愛想だっていいじゃないかー。
ってなわけで、無表情が妙な魅力を発している伊賀観くんです。
ううーむ。いー大人のオトコを推しキャラにしてしまった。むむぅ。
場所悪し、店員悪し、オーナー悪しで閑古鳥が鳴いてる店にはぴったりのキャラクターでしょう。
実際の所、困難を打ち破る強さがあるわけでなし、神がかり的なひらめきで現状を打破するわけでなし、豊富な知識で全てを収めるわけでなし、よーするにフツーのにーちゃんなんですが、そこがフツーの社会人にアピールするところかも。妙に醒めた表情に共感を覚える、不思議なキャラクターですねぇ。

Charactor

うーん。基本的に、個性際だったキャラクターって少ないんですよねー。山懸さんにしても、堤さんにしても、川合くんにしてもフツーの人ですし。主人公の伊賀くんにしてもこれ!という個性はないですね。まあ、そんなフツーの人たちでみょーなハナシを描いてくれるのが、佐々木さんの魅力なんですが。
しかし、しかぁし。
そんな影の薄い主人公+脇役を吹っ飛ばすようなキャラクターがオーナーの黒須仮名子女史。傍若無人で、ストーリーをぶち壊す感じで、いいですねー。自分の雇い主だったら?絶対お断りですが。
自信をなくすと塩気がなくなるシェフ・小澤さんもなかなか興味深いキャラクター。修業時代から7件の店を潰した「伝説のシェフ」の実力がいつ発揮されるのか、楽しみなところですねー。

Guide

シチュエーション的にはバリバリの青年マンガなんですが、テンポはスローだし、努力根性義理人情で事態を積極果敢に打開して行く!というようなアグレッシブな部分は少ないし、描写を見れば、油断してると床に水棲生物がぶちまけられるようなシュールな描写があるし・・・
で、ちょっと入りにくい作品かもしれないですね。あまり構えないで読みだすのが吉、かなと思います。

2000.9