(佐々木倫子/小学館ビッグスピリッツコミックススペシャル・全6巻)
一流フレンチレストランのサービスマン・伊賀観は、謎の美女・黒須仮名子の誘いを受けて、彼女のレストラン「ロワン・ディシー」に入る。・・・とはいえあまりの無愛想さにクビ同然だったが・・・
しかし伊賀がその店にやって来るとその店は今だ未完成、立地は最悪、オーナーはいいかげん、さらにフロア従業員でフレンチの経験者は伊賀ひとりの八方塞がり。
その名も「この世の果て」という店は、果して無事に開店するのか。開店してもやって行けるのか・・・
「動物のお医者さん」「おたんこナース」など、充実としたディテールと、すっとぼけたストーリーが印象的な佐々木倫子さんの新作は、フレンチレストランが舞台。とはいえグルメマンガではなく、お店の舞台裏の人間ドラマがテーマで、佐々木さんのキャラクター作りの上手さが全開するエピソードが連発されています。
場を盛りあげるキャラクターと言えば、オーナーの黒須女史くらいのもので、無愛想が看板の主人公・伊賀をはじめ、レギュラーキャラクターはネガティブなタイプの、場を引き締めるキャラクターが揃っているんですが、とにかくどのエピソードも一筋縄ではいかない条件付きで、盛り上がる盛り上がる(黒須オーナーの余計なちょっかいでさらに盛り上がる盛り上がる)。
すっとぼけてるのにひたむきで、読んだあと心がほんの少し明るくなる。ストーリーテリングの妙が味わえる好作品です。
2000.9