(依澄れい・麻枝准/メディアワークス電撃コミックス・全6巻)
おいしいお茶を入れることだけが取り柄の内気な少女・ヒビキは、人里離れた森の中、マホウの研究者・シロツキと平穏な日々を送っていた。
しかしその日々は、シロツキの研究を狙う賊によって奪われる。
やむなくヒビキは首都・カミグスクへ向かい、カミセイドマホウ学院の門を叩く。そこでヒビキはなんと、シロツキの助手だったという経歴から、マホウも出来ないのに教師を任じられることになる。
さあ!
今世紀最初の期待作の登場です!
原作はkeyの「air」「CLANNAD」でおなじみのゲームシナリオライター、泣きの魔術師・麻枝准さん。
コンビを組むマンガ家は同人界ではおなじみの、角川期待の新鋭・依澄れいさん。
このコラボでショートカットちみっちゃヒロインが奮闘するマジカルファンタジーだってんだから、期待せずにはいられないじゃないですか!
内容はもちろん期待通り、いや期待以上。
天涯孤独な泣き虫少女、だけどがんばるちっちゃな女のコ、ヒビキちゃんが強烈にかわいくて、いきなりマホウ世界に心を奪われてしまいます。
キャラ造形で依澄さんの実力に触れた後は、短いエピソードの中にしっかりと悔恨、絶望、孤独、家族、希望といったキーワードを詰め込んだ、麻枝さん得意の「泣き」のシナリオを堪能。
マホウジンも満足に書けないのにマホウ学校の先生になっちゃったヒビキちゃんを「がんばれ〜」と応援したくなってしまうのは、もちろんこのコラボレーションの相乗効果。
とにかく、作品のトリコになってしまうまでのスピードが尋常ではなく、本来ならとっつきにくいハズのファンタジー設定、多数のキャラに違和感なく溶け込んでしまいます。
作品冒頭には「それは、世界に響きわたる 永遠のクロニクル」というセンテンスがあり、今後は麻枝さんらしいスケール感溢れるストーリーにもつれ込んで行きそうな期待大。
まさにマホウのような、読み手をトリコにする魅力たっぷりの作品です。
だぶだぶのローブに片結わえのショートカットがちみっちゃ感を加速する、かわいいかわいい女のコ、それが本編のヒロイン・ヒビキちゃんです。
とにかくがんばれ〜と応援したくなる要素が山盛り特盛りてんこ盛り。
引っ込み思案で、泣き虫で、ひとりぼっちで、取り柄と言えばおいしい紅茶を入れることぐらいで、とにかく守ってあげたくなるようなタイプのろりっ娘なんですが、ただ守られるだけの儚い存在かと言えば、そうではなく。
数奇な運命に導かれ、マホウジンもろくに書けないのに、マホウ学校の先生となってしまってからも、背伸びするでもなく、でも泣くことなく、マホウの力を使わずに苦しんでいる人を助けようとする姿には心打たれてしまいます。
だから、がんばれと応援しつつ、はらはらしながらヒビキちゃんの行動を追ってしまうんですよね。
たとえマホウが使えなくても、願いの力はマホウを越える、そんな願いがちっちゃな身体にみっしり詰まった、そんなヒロインです。
ハートウォーミング系のお手本のような作品ですね。
ファンタジー系、かわいい系の作品ですが、あくまで前面に出るのはディテールでも萌えでもなく、ストーリーで、しっかりとした読み応えのある作品です。
幅広くオススメ出来るタイプの好作品ですね。
2007.1