ほのかLv.アップ!

(MATSUDA98・太田顕喜/メディアワークス電撃コミックス・全4巻)

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Story

お嬢様学校・聖慎女学院に通う志賀穂乃歌は、絵を描くことが好きだけど、それを形に出来ず、将来の夢を真っ白なままにしていた。
そんなほのかに対し、叔父であるゲームデザイナーの神立隆一は、半ば強引にほのかを、自らが設立した会社「ゼロフレーム」にバイトに来るように勧める。
さっそくゼロフレームを訪れ、バイトを始めたほのかだったが、ゲーム機をいじったこともないほのかにとってゲームメーカーで目にするものは分からないものだらけ。
LV.0から始まる、ほのかの成長物語。

Impression

モノローグからの導入、将来を模索するヒロイン、それに行く手を示す青年の登場。
読みはじめた時は「う〜ん、ありきたりな少女の成長物語なのかな〜」ってな感じで読みはじめたんですが。
ほのかちゃんがゼロフレームの社内に足を踏み入れた瞬間からムードは一変。
優しい紗希さんと、無愛想だけど面倒のいい巧さんのかけあいに代表される、ゼロフレームの人たちのあたたかさにほにゃっと包み込まれて行ってしまいます。
そして、MATSUDA98さんのほにゃっとした絵柄にふさわしい優しいムードに包まれながら、まるでゼロフレームの一員になったかのように、ほのかちゃんの成長を優しく見守る気分になれる、これはまさに上質の「少女の成長物語」なのですね。
ゲーム業界をテーマにした作品ではありますが、ディテールに重点を置かず、あくまでほのかちゃんの成長を描こうとする姿勢にも好感。
作品世界にどっぷりつかりつつ、ほのかちゃんの表情を愛でつつ、その成長を見守りたくなる、温もりたっぷりの好作品です。

Honoka Shiga

犬耳のような束ね髪がかわいいお嬢様、セーラー服が強烈に似合っている本編のヒロインが志賀穂乃歌ちゃん。
絵を描くのが大好き、だけど趣味と現実的な将来像の狭間で立ち止まってしまう、そんな等身大のヒロインです。
アバウトなイメージのゲーム業界に飛び込むには似合わない、世間擦れしてない感じのまじめっ娘。
それだけに、与えられたひとつひとつの課題、ひとつひとつのシチュエーションに正面からぶつかる姿勢には好感がもてますね。
そんな姿からは、ほのかちゃんの倍も歳をとってしまったヨッパライには、正しいかどうかも分からない、隆一から与えられたたったひとつの地図に未来を預けてしまう少女の危うさが感じられて、そういうところ、実にたまらんのですよね〜。
一瞬一瞬を一所懸命生きるからこそ生まれる、喜怒哀楽、戸惑いや感動の表情、そういうものがスナオに胸に飛び込んでくる感じのヒロインで、読めばすぐに誰でもが、ほのかちゃんの応援団になってしまう感じの女のコ。強烈な個性を持っているわけじゃ無いけど、確実に胸の中に住み着いてしまう、そんな印象的な女のコです。

Charactor

この作品の登場人物名って、ゲーム業界をテーマにした作品には似合わないことに「スキー場名しばり」なので、信州を出てからスキーとはご無沙汰な私にとっては、なんだか胸騒ぐキャラ名ばかりだったり。
というわけでまずはぱえーんっと登場、蓼科東急……じゃなかった、蓼科紗希さん。
包容力のあるかわいいお姉さん、という感じで癒されますね〜。実のところ、この作品を読み終えていちばん印象に残っているのって、紗希さんの表情のような気もしますねー。立ち止まりがちなほのかちゃんをやさしく引っ張る存在で、穏やかながらも、この作品を引っ張るエンジンになっています。
そんな紗希さんといいコンビなのが白馬五竜……じゃなかった、チーフグラフィッカーの白馬巧。無愛想なガンマニアではありますが、紗希さんに対するいいツッコミ役であり、ほのかちゃんに対する先生役を担う青年。ほのかちゃんの叔父にして、彼女がゲーム業界に進むきっかけとなる神立隆一が、ストーリーの中では一歩引いたポジションにあるだけに、白馬の存在感はいいスパイスになっていますね。
ガーラ湯沢……じゃなかった(←もういいって)湯沢茜ちゃんは気さくさが魅力的なショートカット女子高生吊り眼っ娘声優。1歳年下のほのかちゃんを半歩先から手招きする、明るい先輩、という感じですね。
考えながら進むほのかちゃんと対照的に、いつも前を向いて、プロに徹して進もうとする姿が印象的ですね。レギュラーキャラではないながらも、作品のいいアクセントになっている女のコです。

Guide

ゲーム業界を舞台にした作品ですが、そちらのディテールは薄目。読者に馴染みやすく、かつアットホームな雰囲気を醸し出すための材料としてこの舞台が用意されている、という感じですね。
ヒロイン・ほのかちゃんにシンクロして読むしか読みようのない(あるいは絵柄萌えか…)作品なので、序盤でほのかちゃんに萌えられるかどうかが勝負の分かれ目ですが、クセのないタイプのヒロインなので、このサイトを見に来て下さるお客さんなら無理なく楽しめる作品かな、と思います。

2006.9