(山野りんりん/竹書房バンブーコミックス・全4巻)
とある街の小さな喫茶店、すぃーと館では、長女・茶苗(さなえ)、次女・葉摘(はつみ)、三女・珈流(かおる)の3人娘と、「からくり時計の魔法夏のアバンチュール風」「ミス・モンブランのふりふりレースの帽子」etc.メルヘンなメニューがお出迎え。
ほんわかした雰囲気と、ずれたセンスが嬉しい、ホット&スイート4コマ。
自他共に認める辛党の私が喫茶店を舞台にさまざまな甘味メニューが連発される四コマを推すとはどういうことか、と思われそうですが。
私、辛党であると同時にコミック美少女党でもあるんですよね〜。茶苗ちゃん、葉摘ちゃん、珈流ちゃんと3人のすっきり系美少女がかわいくもすっとぼけたコメディーを展開してくれるおいし〜い四コマを見逃すことは出来ないのです。
最初読んだときは、「絵柄がかわいくてセンスがおかしいだけの四コマかな〜」ってな感じで印象が薄いんですが、各キャラの個性がキレすぎない程度に立っていて、彼女たちになじんで来るに従って、ひとつひとつのネタがじわじわとボディブローのように効いて来るんですねー。で、読後はなかなかホットな満足感。
テンポのいい掛け合いでテンション高く引っ張る、という作品ではなく、いつの間にか「すぃーと館」の雰囲気にハマってしまっている自分に気付くような、味のある作品です。
「すぃーと館」3人娘の長女にして、ホールを仕切る看板娘。さっぱりしたショートカットが快活なキャラに似合ってますねー・・・
と、ここまでならありきたりのかわいー系コミック美少女の紹介文なんですが、茶苗ちゃんの場合、特筆すべきは何と言っても突き抜けたそのセンス。「メルヘンの扉を開けて・・・白雪姫のモーニングキッスセット」「ミセス・ドルトンのまどろみのサマーブランチ」なんていうメルヘン過剰のメニュー名とか、流しそうめんにケーキ流したりプリンに銀杏とマツタケを入れて茶碗蒸しにしてしまったりする料理センスとか、ビジュアルやノリ的にはほんわか系のかわいいキャラクターなのに、どこか一歩突き抜けてると言うか、踏み外しちゃってるものだから、かわいいを突き抜けたところに魅力があったりして、うーん、なんとも独特のキャラクターなのです。
なんというか、天然ボケと不条理を足して6で割ったようなキャラクター。
個人的には左党というところも気になるポイントですな。
まずは「すぃーと館」シスターズの次女、葉摘ちゃん。すっきり系の美人で、しっかりもの。ボケ系のキャラクターが多いこの作品の中では貴重なツッコミ専業者で、いい感じに作品を締めてくれますね。茶苗ちゃんと比べると、ビジュアル的にも性格的にもどっちが姉だか分からないところがまた楽しいですね。
三女の珈流ちゃんはぽっちゃりした感じがかわいい女のコ。日夜ダイエットを繰り返しつつも、甘いものと離れられないあたり、世の女性から共感を得るんじゃないでしょうか。あるいは禁煙を志しては挫折を繰り返すタイプのヒトとか。なんか憎めない感じの女のコで、ほほえましい感じがします。
最後にカッキーこと柿沼誠青年。見た目はちょっと堅めの営業マン、ほんとはファンシー好きというキャラクターは・・・うーん、なんか身近にひとりやふたり心当たりがあるような気が・・・
一応ツッコミ系キャラなんですが、徹し切れてないあたりになんとなしの好感を感じますね。
テンションの高さで勝負する作品ではなし、ネタ的にもやや弱い感じがありますね。どちらかというと絵柄+雰囲気で読みたいタイプの作品。キャラクターの「持ち芸」が決まっているので、読みなじんでくるとなかなか楽しめます。面白くなるのは1巻の半分過ぎあたりかな。腰を据えて楽しみたい本ですね。
2002.1