(鳴見なる+唐花見コウ/角川書店角川コミックス・エース・全8巻)
野沢ひなげしは、父の再婚に伴って、信州・小川村にやって来た。
野沢家の決まりごとは、新しく姉妹になった社、繭、りんごと4人で、野菜作りをすること。
アルプスを見上げる山間の村で、ひなげしの新鮮な毎日が始まる。
長野県上水内郡小川村。
長野市と白馬村の中間に位置する標高500メートルの山村で、人口は約3000人。
長野県外の人は殆ど知らないのはもちろん、長野県民でも中南信在住の人は殆どどこにあるかも知らないと言う過疎の村。特産はおやき。
そんな名もない村が、なんとなんと、萌え〜なコミックになっちゃいました!
今や長野県内では地方紙で取り上げられるわ、FMの番組で取り上げられるわ、書店ではコミックの棚を離れて注目書のコーナーに並べられちゃっているわ、果ては村公認コミックに指定されちゃうわ、とにかく局地的に注目されている作品なのですね〜。
それは、ヒロイン・ひなぎくちゃんをはじめとする野沢四姉妹がめっちゃくちゃかわいいから、というのももちろんなんですが、「俺ら東京さ行ぐだ」的なんにもないイナカライフが、実は楽しいことがたっぷり詰まった、充実した暮らしなんだよ、ってことをキッパリ示してくれているからなんですよね〜。
中学・高校の6年間を岩手の田舎の農家(小川村ほど田舎じゃないですけどね。クルマで15分くらいのところにはコンビニもあったし)(←十分田舎だよ!)で暮らした私にとっては、実に琴線ビンビンな作品。
萌えて、頬が緩んで、ほこっと出来る、実のみっちり詰まった作品なのです。
ツインテールがトレードマーク。かけっこが大好きな天真爛漫少女。小川村小学校の6年生。それが本編のヒロイン・野沢ひなげしちゃんです。
こうやってスペックだけ並べると、いかにも田舎の自然派少女、って感じがしますが、実は再婚したお父さんに連れられて、東京からやって来た都会の女のコなんですね〜。
お母さんとふたりのお姉さん、ひとりの妹との新しい田舎暮らしに戸惑いながらも、積極的に様々なことを受け入れていく様子が実に微笑ましくて愛らしくて初々しくて……そのピュアさに思わず背筋に電流が走り、おもむろに峠を駆け上がったかと思うと、北アルプスの峰々に向けて「ひなげしちゃん好っきや〜〜〜〜!」と雄叫びをこだまさせたくなってしまう、そんなインパクトのある純粋少女なのです。
お母さんやお姉さんたちはもちろん、妹のりんごちゃんにまで敬語を使う、ちょっとぎこちない感じの初々しさもまた萌えポイント。
まさに、信州が誇る、萌えの集大成のような、可憐な女のコです。
黒髪ポニーテールの中学3年生、野沢社ちゃんは野沢家の長女。
長身でスタイルがよく、寡黙なクールガールといった雰囲気ですが、中身は意外とワイルドで、そのギャップがいいですね〜。
次女の中学2年生・野沢繭ちゃんは家庭的な女のコ。面倒みがよくて、四姉妹のいいまとめ役、というのが役どころですね〜。料理が得意で、虫が嫌いと、なんとも女のコらしいところがまた魅力。おだてられるとすぐに天まで昇っちゃう、その分かりやすさもかわいいですね。
存在感では四姉妹の中でも負けてないのが末っ子の野沢りんごちゃん。
小学1年生にしてすっかりネットの住人で、どこで知識をつけたのかヘリクツの達人。そのかわいげのなさ、ダメっぷりがむしろかわいいという、なんとも逆説的なキャラクターなのです。
理屈っぽくて議論好きという性格は、四姉妹の中でいちばん信州人っぽいという気もしますねぇ……
小川村を舞台にした、小川村公認作品とは言っても、リアリティを追及しているわけじゃなく、きっちり萌えどころは抑えている作品。なんせセーラー服で農作業してますからねぇ……
そういう部分が、この作品の好みが分かれる部分になるかな、という気がします。
個人的には、昭和50〜60年代に、長野県を舞台にしたハートウォーミング作品を描いた小山田いくさんの作品を、当世風にした……というイメージもありますね。
2011.12