(橋口たかし/小学館サンデーコミックス・全26巻)
この作品はTAKAJA さんと「つばさ〜Air」の たいやき さんに紹介していただきました。
稲作農家に育った少年・東和馬は、近所のパン屋で出会ったパンの味に感動。それをきっかけに日本の風土に合ったパン「ジャぱん」の創作を目指す。
そんな彼は「ジャぱん」創作の大志を抱いて上京。ベーカリーチェーン「パンタジア」の門を叩くが、そこには苛酷な試験が待っていた。
パン作りのいろはも知らない我流のパン職人・和馬の挑戦が始まる。
えーと。
このマンガはギャグ、もしくはコメディのジャンルに入る少年マンガなんですが。
すいません、少年系ギャグに共鳴する魂を15年前に北上川に落として来てしまったびぜんやとしては、全っ然笑えないんですよ。とにかく繰り返される駄洒落が寒すぎ。無駄に濃いキャラクターもインパクトが辛くて胃にもたれるのみ。少年ギャグの定番・オーバーアクションには茫然自失として、無駄に費やされてしまったページに合掌。
ヒロイン・月乃ちゃんは気になるけど、「萌える」ってほどでもないしな〜
・・・なんですが。
これだけ否定要素を並べながら、それでもここで作品を紹介してしまうのは、もちろん、面白いからなんですね。
次から次へと出されるパンへの蘊蓄をジャブとして、繰り出されるは創作パン・ジャぱんの数々。それが実際に作れるのか、本当に旨いのかは別問題としても、テーマが身近なパンだけに、「おおっ?なんか凄そう・・・」と思わされてしまうんですね。
それを支えるストーリーは往年の某料理バトル番組を思わせる、パン作りバトル。少年誌らしい熱さがこみ上げて来ます。和馬・河内のコンビが立ち向かうは、「パンタジア」の誇る強豪パン職人ばかり。それらのキャラは前述したとおり、鹿賀丈史も真っ青の濃さ。それだけに右肩上がりでボルテージが上がってしまうんですよね。展開も早く、キャラ→ディテール→バトルというサイクルが矢継ぎ早に繰り出され、荒唐無稽な作品世界に、自然に巻き込まれていってしまいます。
少年系ギャグにまったく親しめない私でも楽しめるのだから、少年系ファンの方ならもっと楽しめるのでは。
・・・余談ですが、「梓川」「諏訪原」「松代」と、信州絡みのネーミングが多いよーな気がするのは気のせいでしょーか・・・となると究極の「ジャぱん」はりんごパン?それとも栗かのこパンとかおやきパンとかわさびパンとか馬刺しパンとか野沢菜パンとかザザムシパン(←これは嫌だ)とか・・・
物腰柔らかな、話の分かるお嬢さま?
と思わせておいて、どこかミステリアスな雰囲気が漂う。それがヒロイン・梓川月乃ちゃん。パンに関する蘊蓄の説明役でもあり、時に厳しく、時にダークに和馬たちを成長に導く指南役。さらにギャグ部門もこなし、ただのかわいこちゃんでは終わらないタフさ、そして存在感を秘めています。
少年誌らしい一直線構造。さらに週刊誌連載には珍しく、テンポが速いので読み進めやすいですね。
問題点はやっぱりギャグの質に尽きるんですが、この辺は気にせず読みとばす方向で。少年系ギャグの好きな方なら、もちろん問題ないでしょう。
2001.12