(えのあきら/小学館サンデーGXコミックス・1〜22巻)
バイク便ライダーの主人公・宮城進武と、旧車主体のイタリアンバイクショップ『GOBLIN』の店長・滝沢レナ、レナの親友・安達カナコの3人をメインとしたバイクラブコメ。
バイクのことになると目の色を変えるくせに恋には鈍感なミヤギとレナの煮え切らない関係を、旧車に関する蘊蓄を絡めつつ、雰囲気豊かに描く。
基本的にノリモノなら何でも好きなびぜんやですが、バイクとの縁はというと、学生時代から新入社員の頃、ホンダのスクーターを乗り回してたくらいのもの。なわけで、「え?バイクマンガ?しかもイタ車?はうぅ〜、名前知ってるのすらドゥカティくらいしかないぞぉ」とおそるおそる手に取ったんですが。
問題なかったですね、全然。確かにバイクに関する蘊蓄はちりばめられてますが、ストーリーを壊さない程度で、それもフィーリングで分かるものがほとんど。むしろそのバイクネタが適度な濃さを醸し出していて、なんともいえないような、いい雰囲気が立ち上って来るんですよねー。
濃さを醸し出す要素にはセリフの多さもあるんですが(何せ蘊蓄多いからね)、それを会話のテンポの良さと、表情豊かなキャラクターがうまく補っていて、濃い割にはするすると読み進められてしまう。この辺がこの作品の絶妙なポイントになってるんですよねー。テキストの多さを絵が補うというのは、マンガの理想的な関係ですよね。
そしてもひとつ推したいのは、それぞれのシーンに漂う空気感。ツーリングシーンの耳元を切り裂くような清涼な空気の匂いはもちろん、室内のシーンや平凡な街角のシーンであっても、丁寧に書かれた背景がリアルな空気の匂いを作り出してる感じで、作品にいいリアリティを生み出しているんですよね。ふらっと立ち寄ったどこかの街角にイタ車ショップ「GOBLIN」があって、レナちゃんが、ミヤギが、カナコがいそうな気がする。そんな作品世界が嬉しいですね。
もともとえのさん描くスレンダーな女のコが好きで、アダルトコミックレビューでは2作を紹介してる私ですが。
レナちゃんにはひとコマ目でころっと参っちゃいました。かわいすぎっ!
ポニーテールが似合う、すっぴんの元気少女。満面の笑みに、きらきらの瞳。それでいて、バイクのハナシになると目の色がころっと変わっちゃったりして、このへんがいやはやなんというかいやまぁ、ええ、いいんですよ。
バイクのことになるとまるで子供なのに、どこか大人っぽくて、時にクールで。そういう、アンビバレントな表情を持つ女性って、男の好奇心をくすぐるんですよね〜。わかるでしょ?
まさにツナギを着た小悪魔。ミヤギならずとも翻弄されたくなるような、無邪気さが蠱惑的な魅力になってますね。
レナちゃんの旧友にして現役の走り屋・安達カナコさんもいーですよねー。こざっぱりとしたショートカットが似合う美人。ちょっと男勝りというか、クールな感じがなかなかナイスで、レナちゃんより魅力的、と映る人も多いのでは。レナちゃんとミヤギの恋路にやきもきしつつも応援してる、その心の動きにシンクロしちゃいますね。
主人公・ミヤギこと宮城進武はなかなかの好漢。メインキャラ3人衆の中でいちばん立場が弱いあたりがステキです。
そのほかにも、ミヤギの恋のライバル・青田やべらんめい調が心地いいオッサン常連客の伊藤さんなど、読んでて気持ちいいキャラクターが多く、キャラクター関係がどこかさわやかなのはうれしいですね。
オビの「むしろ、バイクを知らない人に読んで欲しい。」という惹句そのままですね。基本的にムードで読む作品なので、バイク知ってる人だとバイクに関する蘊蓄がかえって邪魔になっちゃうかも知れません。
けっこうボリュームのある作品なので、バイクネタは適宜読み飛ばしたりしつつ、テンポのいい会話を追っていくのがいいでしょう。
美少女系でおなじみのえのさんの作品ですが、お色気はほとんど期待しないで下さい。あしからず。
2001.8