かつて魔法少女と悪は敵対していた。

(藤原ここあ/スクウェア・エニックス ガンガンコミックスJoker・全3巻)

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Story

あらゆるものを侵略し、あらゆるものを滅ぼす、悪の組織。その参謀は情に流されることない、優秀にして冷酷な頭脳と称される男だった。
一方、その悪の侵略に立ち向かうべく立ち上がったのは孤児院育ちで、「御使い」に選ばれた儚げな少女だった。
そして、悪の参謀と魔法少女が相まみえた時。
…………………………悪の参謀は、魔法少女にひとめぼれした。
夭折の鬼才・藤原ここあが最後に世に送りだした、破壊力満点のコメディ四コマ。

Impression

藤原ここあさんの新作は、なんとなんとの四コママンガ(四コマじゃないエピソードもありますけどね)。
ハイテンションなコメディと、萌えるヒロイン、そしてインパクトのあるファンタジーを融合させてきた藤原さんですが、この作品は四コマと言うことで、テンポのいいコメディに特化しています。
すべてに諦めがちな魔法少女・白夜ちゃんに恋するハイテンションな悪の参謀・ミラの悶絶自爆っぷりがいちばんの見どころ。テンションが低すぎていったいどこが正義の魔法少女なんだとツッコミたくなる白夜ちゃんと、白夜ちゃんの前に立つと挙動不審っぷりが300光年彼方まで突き抜けてしまうミラのコンビはまさに漫才そのもの。四コマのリズムできっちり展開されるそのコメディ劇だけでも面白いんですが、そこにつけられたタイトルが「五コマ目」として機能していて、爆笑ネタにしっかり止めを刺してくれます。
もちろん、かずかずの美少女を生み出してきた藤原さんですから、萌え方面もパーフェクト。薄幸魔法少女豊乳系・白夜ちゃんに萌えるも良し、なんだったら残念鬼畜眼鏡・ミラに萌えるも良し。
全方面からたっぷり楽しめるアルティメットな四コマです。

Byakuya Mimori

身寄りがなく孤児院で育ち、つましい暮らしを続ける薄幸少女。
うんうん、いかにも魔法少女もののヒロインといった感じのスペックを持った本編のヒロイン、それが深森白夜ちゃんです。
が。
あまりヒロインっぽくないんですよねぇ〜、このコ。
表情乏しく主体性乏しくテンション低く色素薄く。目立つといえばグラマーなプロポーションぐらいという、どちらかというとモブキャラ向きのスペックも兼備しちゃっているのです。
そんなキャラクターですから騙されやすく、ヤクザまがいの手口で魔法少女になってしまい、夜の街で水商売をしていたりするなんて、魔法少女とは思えないプロフィールを持っているのです。
しかしそんな無垢で幸薄い女のコだからこそ、参謀ならずとも保護欲を掻きむしられ、身悶えしてしまうんですよね。
そして、たまに垣間見せる本音が胸をきゅきゅきゅきゅきゅんとときめかせる、魔法少女というよりはむしろ小悪魔なヒロインです。

Charactor

……さて。
魔法少女・白夜ちゃんを紹介してしまうとあとはヤローしか残ってないんですが。
必然的にテンションが下がってしまうんですが。
ま、しょうがない。続けてサブキャラの紹介にまいりましょう。
タイトルにある通り「魔法少女」に「敵対」するのが「悪」。
その悪のメインパーソナリティが悪の組織で王の片腕としてその腕を振るう悪の参謀、悪のエリート、悪の眷属であるミラ、その人です。
黒髪に軍服、さらにメガネというクールなイケメン。黒髪鬼畜眼鏡が好物のウチのヨメさんだったらそのルックスに萌え転がり、そのまま奈良井川→梓川→千曲川→信濃川と萌え転がったまま流されていき、日本海まで辿り着けそうなルックスなんですが、残念なことにこの鬼畜眼鏡、白夜ちゃんにひとめぼれして、貢ぎ続け、世話を焼き続け、悶え続ける、残念なあんちゃんと化してしまいます。クールでありながら行動がアレな、そのギャップでこの作品をお笑いに転じさせる、なかなか得難いキャラクターです。
もうひとりのキーパーソンが「御使い」。猫のような姿をし、「ボクと契約して魔法少女になってよ」とかなんとか言って白夜ちゃんを魔法少女に導く、どっかで聞いたことのあるようなキャラですが、おそらくたぶん別物です。白夜ちゃんの頬を「魔法少女になって世界救うのと身体売るのどっちがいい?」なんて言いながら張り飛ばし、座椅子にふんぞりかえって煙草をふかしながら白夜ちゃんの痴態を眺めている、到底正義の御使いとは思えない、というかミラよりよっぽど悪徳なキャラだったりします。
このふたり、ほんとにツッコミどころにあふれていて、気づくとよっぽど白夜ちゃんよりこのふたりのほうが気になっちゃうんですから、ほんと個性強すぎて困ったヤロー共です。

Guide

カテゴリ的には四コマ、ということになっていますが、すべてのエピソードが四コマの枠に納まっているわけではなく、自在なテンポで進みます。
基本的なノリは今までの藤原作品同様ですので、古くからの藤原ここあファン、「いぬぼく」からのファンも安心して飛び込める、イージーな作品です。

2015.11