キラキラ100%

(水沢めぐみ/集英社りぼんマスコットコミックス・全9巻)

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Story

品川みくはクラスの「地味」グループの中にいる、目立たない、フツーの女のコ。
クラスの人気者で、憧れの渋谷くんに告白、つきあいはじめるが、自分への自信のなさからすぐに別れてしまう。
そんなみくを見かねた祐天寺はみくに1本のビューラーを渡し、こう告げる。
「品川なんて今まで1度もキレイになろうと努力したことがないんじゃねーの?」
その言葉通り、ビューラーでまつ毛を上げ、髪を切ったみくはおしゃれに目覚め、輝きを放ちはじめるが・・・

Impression

少女マンガといえばやっぱり瞳がキラキラしちゃうようなべた甘の恋愛ストーリー。シュークリームに粉砂糖たんまりぶっかけて、汁粉と一緒に呑み込むような、胸焼け度1000%のこってり感。
そー考えている人もいるんじゃないでしょうか。とはいえ最近は萌え狙いだったり、ちょっとHだったり、シチュエーションに凝ってたり、読み手のタイミングを狂わせるような変化球が全盛で、直球の少女マンガというのはなかなか見かけなくなって来ました。
そんな中、水沢めぐみさんが「ポニーテール白書」「チャイム」「いちごの宝石」などの系譜に連なるどまんなかストレートの学園ラブストーリーをまたもリリースしてくれました。
いつもながら、水沢作品を評するには「オーソドックス」の一語しかないんですが、この作品も、定番ロングセラーだからこそ持ちうる強みが存分に発揮されています。
地味〜な女のコが、恋愛と、ひとつのビューラーをきっかけに輝きを掴んでいく物語。もちろんストーリーは山あり谷ありなんですが、見るからに「あー、最後は砂吐きたくなるほどの甘ぁ〜いハッピーエンドなんだろーなー」というムードが保たれていて、事実そーなるんですが、その過程がまた巧い。
一コマ一コマに恋する女のコの嬉しさや不安、ときめきやとまどいがぎゅっ!と詰め込まれていて、密度高いんですよねー。そしてそれは、男女問わず、恋愛経験ある人なら、誰でも納得出来るようなリアルさがあって、そこがこそばゆい嬉しさなのです。
読後に思いきり気持ちよく砂を吐くことが出来るような、背中むずがゆ度抜群のラブストーリー。
恋愛って、こーゆーものだよね、そう感じられる作品です。

Miku Shinagawa

あおたの初恋の女のコって、どんな女のコでした?
TVの中のアイドル? マンガの中の美少女? でも、近くにいるフツーの女のコだったよ、ってヒトもきっと多いはず。
でも、その女のコはキラキラ輝いてる女のコだったんじゃないかな。
品川みくちゃんは、そんな、フツーっぽさが魅力の、だけどキラキラ輝いてる女のコなのです。
自分の顔を間近に見られるのが恥ずかしくてキスを拒んじゃったり、覚えたてのおしゃれに夢中になって食費にも事欠いてみたり、彼氏の好みに合わせようと一生懸命背伸びしてみたり、渋谷くんに似合う女のコになろうと一生懸命。渋谷くんの誕生日には「あたしをプレゼントしたいっ!!」、なんて言ってみたりして、こんな女のコが自分の彼女だったらどーする?どーする?という感じ。
そんな何気ないひとつひとつのシーンがキラキラしてて、読んでるこちらは思わずどきどきしちゃうのです。
恋する女はキレイさ〜♪と若者置き去りな流行歌の一節が思い出されるような、心ときめかせる地味系ヒロイン。みくちゃんが放つ初恋キラキラ光線に、きゅ〜んとハートが震えて、ノックアウトされてしまいます。

Charactor

黒髪メガネ地味少女、ごっちんとか、女性キャラもいるにはいるんですが、みくちゃんと渋谷くん、ふたりをメインに描かれたラブストーリーなので、女性キャラは少ないですね。そのうち、みくちゃんのライバルとか出てくるのかもしれませんが。
てなわけでみくちゃんの彼氏、渋谷くん。ん〜、優しくて、誠実で、爽やかで、いかにも少女マンガのヒーロー、って感じの好青年ですねー。でも、その裏で女のコとどーつきあったらいいかわからなくて悩んだり、空回りしたりと、思春期のオトコノコらしい初々しさもあって、ちょっとかわいい感じがしますね。
みくちゃんのアドバイザー役が祐天寺くん。ちょっと軽い感じもあるけど、性根は直情漢。これはこれで、少女マンガのヒーローらしいキャラクターですね。「うじうじくよくよすんのは とりあえず努力してみてからでもいいんじゃないの?」彼のセリフはそのまま、この作品に込められたメッセージ。ページの向こうの少女たちにメッセージを送る、大事なサブヒーローです。

Guide

うひー、地味。
当サイト紹介作品の中でも、トップクラスのインパクトのなさです。
バリバリの少女マンガなので、萌え要素は極薄。華にもいまいち欠ける感じで、読んでようやく分かる、といった感じです。
この恋愛描写に特化した作品を、どれだけ楽しめるか、溢れんばかりにこそばゆい恋愛要素を、どこまで楽しめるか。となると、楽しめる人は限られて来そうです。

2004.2