(水沢めぐみ/集英社りぼんマスコットコミックス・全9巻)
品川みくはクラスの「地味」グループの中にいる、目立たない、フツーの女のコ。
クラスの人気者で、憧れの渋谷くんに告白、つきあいはじめるが、自分への自信のなさからすぐに別れてしまう。
そんなみくを見かねた祐天寺はみくに1本のビューラーを渡し、こう告げる。
「品川なんて今まで1度もキレイになろうと努力したことがないんじゃねーの?」
その言葉通り、ビューラーでまつ毛を上げ、髪を切ったみくはおしゃれに目覚め、輝きを放ちはじめるが・・・
水沢めぐみさんの新作は、お得意の学園恋愛もの。突出したキャラもなく、これと言ったインパクトもないので地味な印象はありますが、ベテランらしく丁寧に心理描写がされており、好感の持てる作品です。
「おしゃれ」をキーワードに、女のコが魅力的になるには、自分を磨かなくちゃいけない、自分を好きにならなきゃいけない、というのがテーマになっているのですが、等身大のヒロイン・みくの心理がディテールたっぷりにしっかりと描写されているので、教条的な堅苦しさはなく、平凡なテーマながら読者をしっかり納得させる要素が揃っています。ストーリーの流れと、そこに挿まれたエピソードのどれもが的確で、意外な展開はどこにもないのに、胸をはっと衝かれるようなインパクトがあり、このへんはさすがと唸らされるところですね。
自分を輝かせるために得るもの、失うものの対比が鮮やかに表現されており、年少読者には憧れやすく、同世代の読者には共感しやすく、そして大人の読者には甘酸っぱいこそばゆさを思い出させるような感じがありますね。
恋をする日々のきらきらした感じがたっぷりと詰め込まれており、読後に温かな充実感が感じられます。
2004.2