(重野なおき/白泉社ジェッツコミックス・1〜3巻)
1569年。尾張の風雲児・織田信長は天下統一へ向けて着実に勢力を広げつつあった。
播磨の弱小大名・小寺政職に仕える家老・黒田官兵衛のもとにも、その勢いは迫りつつあった。
西の毛利につくか、東の織田の傘下に入るか、揺れる小寺家。官兵衛は新興勢力・織田につくことを進言するが……。
戦国史に名を残す軍師・黒田官兵衛の生涯を描いた大河四コマ。
書店の「黒田官兵衛コーナー」に置かれていたので、思わず手に取ってしまった本。別に大河ドラマとか見てるわけでもないんですけどね。
まぁ、重野作品は個人的にもお馴染みではありますし……ということでさっそく頁をめくってみると、おお、面白い。
官兵衛の事績を忠実になぞり、そういう意味では説明的な本なんですが、読みにくいということはまったくなし。
ステレオタイプを巧く使い、多彩なキャラクターが把握しやすいのがなによりの美点。その多彩な登場人物にまつわるこまかいエピソードをこまごまと散りばめてキャラクターに厚みを加えつつ、笑いどころにしているので、ぐいぐいと作品世界に引き込まれてしまうんですね〜。
歴史ものだからとストーリーにこだわるのではなく、4コマ目にはきちんとオチをつけてくるところはヴェテラン四コマ作家らしい技の冴え。
読み応えと面白さがきっちり両立した、戦国四コマです。
本作品の主人公が、言わずと知れた黒田官兵衛。日本一の軍師と称される男らしく、智略軍略で難敵を倒し、戦乱の世を渡っていく様は痛快な限り……ですが、秘伝の目薬「玲珠膏」にこだわりすぎたり、光さんが大好きすぎたり、急いてはことをし損じたりと、なにかと「過ぎたるは及ばざるが如し」を地で行くような残念さが目について、なんとも面白いもののふになっちゃってます。
その官兵衛の奥さんが光さん。黒髪オデコがチャームポイントの「才徳兼備」な女性。毒舌がズバリ気持ちよく効いてますね〜。しかしただキツいだけのヨメさんではなく、官兵衛が大好きすぎて、さらに親バカすぎる一面があって、なんとも微笑ましく愛らしい。まさに理想の奥さんなのです。
強力無双の酔漢・母里太兵衛、分別者の栗山善助はいかにも「凸凹コンビ」という感じの義兄弟。天然ボケの太兵衛と、ツッコミ役の善助というバランスがナイスです。
個人的には羽柴秀吉の正室、黒髪つり目がチャームポイントのねねにも言及したいところ。貴重な女性キャラでもありますしね。まぁ、出番はほとんどないんですが。
隣国・備前の宇喜多直家は暗殺をお家芸とする、官兵衛とは違ったタイプの智謀家。あっけらかんと暗殺をネタにしちゃったりするところが、いいキャラだと思うのです。
歴史をテーマにした作品なので、さすがに歴史に興味のないヒトには辛いかな、と思います。
が、キャラクターは分かりやすく説明されており、中学教科書程度の歴史知識で十分楽しむことが出来ます。
萌え方面への期待は禁物ですが、黒髪和装人妻好きな方なら意外と楽しめるかも。
2014.11