時空異邦人KYOKO

(種村有菜/集英社りぼんマスコットコミックス・全3巻)

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Story

30世紀。地球国の姫、朱臣響古は身分を隠して高校に通っていたが、そろそろ公務にも顔を出さなければならない年頃に。
一度は学校はあきらめ、「姫」に専念しようと思う響古だったが、16年間眠り続ける妹・憂姫も目覚めさせれば自由を得ることが出来るかも知れないと知り、その鍵となる12個の「神の石」と12人の能力者を捜すことに。
「時空石」を手にし、最初の能力者「時空異邦人」となった響古姫の冒険が始まる!

Impression

えーと、インプレに入る前に。ページデザインの関係でここに書くけど、「時空異邦人」と書いて「タイムストレンジャー」と読むんだぞぉ。以上、前置き終わり。
んでは本格的にインプレ。「神風怪盗ジャンヌ」でメガヒットを飛ばした種村さんの新作にして、「鍵集め」系のヒロイックアドベンチャーです。
これまでも華のある作品がいろんなマンガ家さんの手によって発表されてきたジャンルではありますが、その先達にも負けない華がこの作品の魅力!
気高さと愛らしさとミョーなセンスを兼ね揃えた魅力的なヒロイン・響古ちゃんに、対照的なカラーが持ち味の氷月・逆滝兄弟がアクセントをつける感じで、その会話のテンポが絶妙。ナチュラルハイな感じの作品世界に乗せられるまま、ぐいぐいと30世紀の冒険譚に引き込まれてしまいますね。
キャラクターの魅力とノリで読者を引き込むタイプの好作品。ワンウエーストーリーに身も心も任せ、響古ちゃんの笑顔やきりりとした表情にときめきながら突っ走りたくなる、うれしい作品です。

Kyoko Suomi

お姫様らしいちょっとわがままなところが魅力的な響古姫。わがままといってもヤ〜な女、というワケじゃなく、ほほえましい気ままさで、「何言っとんじゃー!」と愛の裏拳ツッコミをかましたくなるよーな、そんなわがままなのでむしろ魅力的。
自分のドレスに使うレースのデザイン画のために時をさかのぼっちゃったりする、その無茶な行動力がいいですね。
そこにミックスされるのは、栗色のロングヘアーから漂う気高さだったり、ぴんと張りつめた細い眉に垣間見える正義感だったり、おっきな瞳にきらきらと輝く乙女の純粋さだったり、時にはすっとぼけたようなミョーなセンスだったり・・・
そんな個性が破綻なくひとつの人格に収まっていて、朱臣響古という、華のあるキャラクターになっているんですね。うん、そこがいいです。
でもね、個人的にはタイトスカートとそこから覗く脚線美がいちばんのチャームポイントではないか、なんて思ってたりするんですが・・・(汗)

Charactor

今のところメインで出てくるキャラクターが少ないのと、KYOKOちゃんの個性が強いので、なーんとなく脇キャラがかすみがちなような気もしますが、なんのなんの。なかなかいいキャラは揃っているのです。
その中でも光ってるのはやはり、竜族の末裔にして響古姫のボディガード、神兄弟でしょう。
個人的には兄・氷月の方が好み。すっとぼけっぷりの裏に隠された謎めいた素顔・・・というのは私の好みの要素です。ノリのよさもなかなかで、見ていて楽しいですね。
弟の逆滝くんはそのまっすぐさが魅力。「瞳のひたむきさ水晶の輝き」そのとおり、ちょっとカタいけど、まっすぐな光を帯びた性根がすがすがしいですね。響古姫にいいようにあしらわれてるとこがまた(笑)。
ストーリーと無縁のところで独特のムードを醸し出してるちょこらもまたなかなか。えーと、本名あるんですよね。ちょこら=アナローグ三世でしたっけ(違)。ほとんど不条理としか思えないその言動が気になってしまう、素敵なキャラクターですね。
そして最後はタイム・スコーピオン・ケインこと杖ちょん(逆)。この作品中もっとも良識あるキャラクター(杖だけど)で、響古姫との問答が楽しいですね。それなのに、どこか人間くさい(杖だけど)ところがあったりして、なんとなくその存在が気になってしまいます。

Guide

トーンばりばり、絵柄も眼が縦に大きいりぼん定番スタイルでややくどい印象はありますが、絵柄で読み手が引いてしまう、という程ではないですね。
最初のページからいいノリを作っている上に、ストーリーがアップテンポでワンウエーなので、かなり入りやすい作品だと思います。
小ネタのセンス的な部分で好みが分かれそうですが、このHPのお客様なら、むしろこのセンスが受けるのでは?と思います。安定して楽しめる作品です。

2001.3