まちカドまぞく

(伊藤いづも/芳文社マンガタイムKRコミックス・1〜3巻)

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Story

どこにでもいる15歳の少女・吉田優子は夢のお告げを受け、闇の一族の力に目覚める。
闇の一族は太古より光の一族と戦いを重ねており、その中であらゆるパワーを封印され、今では「家族四人で月四万円生活」などという呪いまでかけられていた。
その呪いを解き、豊かな生活を送るには、光の一族の魔法少女を倒し、その生き血を邪神像に捧げなくてはならないのだ。
かくして魔族としての活動を始めた優子だったが、ダンプに轢かれそうになったところを、魔法少女に助けられてしまうのだった。

Impression

以前某八王子市某堀之内に住まい、今も競馬場帰りに某聖蹟桜ケ丘の某京王アートマンや某オーパの某アニメイトに行っている私としてはおなじみ、多摩市聖蹟桜ケ丘……ではなく多魔市せいいき桜ヶ丘を舞台にした“ご町内小決戦4コマ”。
掲載誌で読み始めた当初は、「ヴィジュアルもこなれているし、絵柄もかわいくて好みだな〜」ぐらいの認識でいたんですが、そのうちシャミ子のへっぽこ魔族っぷりと、桃とのとぼけたかけあいにずっぽりハマって「これは面白い四コマだ」と、毎月の発売日を楽しみにするようになり、コミックスが出るころにはすっかり、これがかわいい女のコが出てくる萌え四コマだということを失念しかけていました。
そんなわけで、かわいさと面白さがハイレベルでバランスしちゃっているのが「まちカドまぞく」のセールスポイント。
正直すぎてへっぽこすぎる魔族・シャミ子もそうですが、6年くらいに世界を救った魔法少女でありながら、なんかパーツが足りない感じで残念な桃の個性もインパクトフルで、このふたりの融合が、なんとも面白いのですよね〜。
ヴィジュアルを楽しむだけじゃなく、コントのようなシチュエーションやかけあいを楽しむ、ラノベライクな新感覚萌え四コマなのです。

Shadow mistress Yuko

本編のヒロインがシャドウミストレス優子ちゃん。本名・吉田優子、呼びにくいので略してシャミ子です。
ある日突然闇の力に目覚め、頭からは羊のような角が生え、しっぽまで生えてきちゃった女のコ。「光の一族」に封じられた「闇の一族」の力を解き放つため、魔法少女の生き血を邪神像に捧げるのがその使命、なんですが。スペック的には完全無欠のダークヒロインなんですが。
元のスペックがへっぽこすぎるので、闇の力に目覚めてもやっぱりへっぽこ。
さらに魔法少女・桃とは知力体力魔力打たれ強さのレベルが違いすぎるので、全然相手にしてもらえない、なんとも残念な魔族なのです。
それでもテンション高く、まっすぐに魔族としての道を貫こうとする、なんとも健気な女のコ。
魔族だけども応援したくなっちゃう(←ただの判官贔屓)、そんな一本気なヒロインです。

Charactor

シャミ子のライヴァルとなる魔法少女が、千代田桃ちゃん。
自分のことに無頓着な、クールな女のコなんですが、こと体を鍛えることになると妙に熱を帯びてくる、そして身体測定では握力計を振り切り、朝飯前にフルマラソンをこなしちゃう隠れ熱血少女なのです。
フレッシュピーチハートシャワーとかいう桃色必殺技を使って、6年前くらい前に世界を救っちゃったって言うんだからスゴイ。とうぜんへっぽこ魔族のシャミ子が敵うわけなく、いいように遊ばれたり、時にはシャミ子を鍛えてあげちゃったり。そのへんがなんともい〜い凸凹コンビになっているんですね。
シャミ子のごせんぞ様が、リリスさん。普段は邪神像に封じ込められていますが、時折シャミ子の夢の中に出てくる……なんていうとなんか禍々しそうですが、その実はやっぱりへっぽこ。御託ばかりは一人前だけど、その実連戦連敗という、残念もここに極まれりというキャラクターに、思わず失笑が漏れてしまいます。
作品のいいかき回し役が、黒髪元気少女の佐田杏里ちゃん。黒髪元気少女のルックスそのままに天真爛漫で能天気。時に作品世界のナヴィゲーターをしつつ、無邪気にシャミ子を窮地に追い込む、なんとも妙な存在感のある名脇役ですね。
最後の紹介がシャミ子の妹、小学生の吉田良子ちゃん。ベレー帽もかわいい小学生で、なんとも物分かりのいいよくできた妹さん。大人びているようで、魔族の血に目覚めたお姉ちゃんを尊敬し、力になりたいと思っている素直さがあって、そこがなんともチャームポイントなのです。

Guide

魔法少女ものですが、バトル要素はまるでなし。かわいいキャラクターと、生きがよくとぼけた風合いのかけあいを楽しむ作品ですね。テキストが濃い分、「きらら」系にしてはゆるふわ成分が少ない印象。萌える、癒される、和む、というよりはきっちり笑うタイプの作品ですね。

2016.5