(伊藤いづも/芳文社マンガタイムKRコミックス・1〜3巻)
どこにでもいる15歳の少女・吉田優子は夢のお告げを受け、闇の一族の力に目覚める。
闇の一族は太古より光の一族と戦いを重ねており、その中であらゆるパワーを封印され、今では「家族四人で月四万円生活」などという呪いまでかけられていた。
その呪いを解き、豊かな生活を送るには、光の一族の魔法少女を倒し、その生き血を邪神像に捧げなくてはならないのだ。
かくして魔族としての活動を始めた優子だったが、ダンプに轢かれそうになったところを、魔法少女に助けられてしまうのだった。
またかと言われても「きらら」レーベルからのご紹介です。
かわいい絵柄は「きらら」標準と言えるもの。魔法少女と魔族の対立というのは、地に脚のついたシチュエーションが多い「きらら」系にしては珍しい……とも思えますが、舞台は町内からはみ出ることなく、実にこのレーベルらしい、小さな世界の手の届く範囲で物語が繰り広げられます。
テンション高い魔族の末裔・優子と、クールな魔法少女・桃のコントラストがテーマになるこの作品、漫才のようにいきのいいかけあいが全編で繰り広げられ、その間にうまくオチを挟んできて、実にテンポよく楽しめます。
「お約束」を散りばめた、様式美とも言えるようなネタづくりは最近の萌え四コマのメソッドよりは、ライトノベルのそれに近いものを感じますし、リズム感は漫才やコントに近いものがあります。なので、マンガを読んでいる、というよりはアニメかコントを見ているような、相手のリズムに嵌められる楽しさが感じられますね。
ただ笑わせるだけではなく、アットホームだったり、ハートウォーミング的だったり、そういうネタでリズムに緩急をつけ、狭い作品世界に広がりを感じさせるのもこの作品の達者なところ。
レベルの高いコメディで、ここからどのように作品が膨らんでいくのか、実に楽しみな新作です。
2016.5