(椎名あゆみ/マーガレットコミックスクッキー・1〜5巻)
読書が好きな女子高生・充希が好きになったのは、倍以上も年上の、同じ趣味を持つ喫茶店のマスター・隆聖。
一度は充希が告白してフラれ、消えた恋だったが、その恋は充希が大学生になり、隆聖と再会したことでふたたび目を覚ます。
そこには充希と同い年の隆聖の息子、玲於が絡んできて……。
ショートカットの、素直でものわかりのいい女子高生ヒロイン(すぐにロングヘアーの女子大生になるけど)。
本を絆に始まるロマンス。
そして本好きのための秘密基地のようなカフェ。
少女マンガ好きとしても。読書好きとしても。もちろん、二次元のかわいい女のコ好きとしても。いちいち、ツボだぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ! と、あがたの森図書館前から冬の夜空に叫びたくなる、そんな作品です。
キャラが魅力的、シチュが魅力的、というのが大きい作品ですが、ストーリー展開もまたいいんですよね〜。
礼儀正しいけど言うことははっきり言う充希ちゃん、常に落ち着いていてミステリアスな隆聖さん、ぶっきらぼうだけど誠実で隠し事が出来ない玲於の3人をメインに、周囲の個性的なメンバーを交えたかけあいは実に生き生きしていて魅力的。会話と表情が作る穏やかな世界観に、どっぷりと浸りたくなっちゃうんですよね〜。
だから、女子大生がバツイチ子持ち若作りのオッサンに惹かれるという、「クッキー読者にとってそれはどうなの?」 的なシチュエーションでも違和感なく楽しめて、ハマっちゃえる。もちろんオジサン読者としては、「充希ちゃんのような女子大生とこんな素敵なロマンスしてみたい!」と当然思っちゃうわけです。
ありそでなさそなシチュエーションを、少女マンガという小箱に手際よく収めて、厭味にならないようにデコレーションしたような、珠玉のピュアロマンス。
これはオススメです。
お淑やかで、明るくて、かわいくて、古い、渋い作家の著作も読みこんじゃうほどの読書好き。
読書好き男子の理想をぎゅーーーーーーーーーーーーーーーーっと詰め込んだようなヒロイン、それが本編の主人公、長谷川光希ちゃんです。
大学生になった髪が長くなった充希ちゃんも、いかにも文学少女風でまたよいんですが、登場時、JKだったころのショートカットもまたキャラクターに似合ってていいんですね〜。
今まで好きになった人はみんな10歳以上年上のシブ専で、今回ひとめぼれした相手も18歳年上の喫茶店のマスター、学内の評価は「じじくさい」「変に老成してる」ってんですから、少女マンガのヒロインとしてはなかなか異色ですよね。こんなんで読者の共感得られるんやろかと、ちょっと心配になっちゃうくらい。
まぁ、そのへんの趣味はともかくとしまして、玲於には表情ですべてを読み取られちゃうくらい気持ちが表に出ちゃう純真で素直なところが光希ちゃんの最大の魅力。隆聖のことでいちいち一喜一憂するあたりがなんともあぶなかしっくもかわいらしくて、実に魅力的なのです。
大人に、大人の恋に憧れて揺れ動く充希ちゃんの表情こそが本編最大のみひどころであり、魅力。
恋が成就してほしい、と思って応援しつつも、その真っ白さは失わないでほしいと願いたくなる、そんなヒロインです。
一見20代前半のイケメンだけど実は充希ちゃんより18歳年上、薬指に結婚指輪が光る子持ちの34歳。少女マンガとしては異色のヒーローが浅井隆聖氏。
常に物静かで余裕のある大人の男、しかもイケメン。さらに若作り。なるほど、なかなかのハイスペックですよね〜。
充希ちゃんの憧れを一身に受け、玲於の前に立ちはだかる大人の男でありながら、充希ちゃんに振り回されていたり、子育てに悩んでいたり、時に余裕のない素顔を垣間見せるのもこの人の魅力の一端。
大人の男性読者としては「こんな出来過ぎたオッサン、いるわけないだろ〜。ファンタジーだよ、ファンタジー」とかやっかみつつも、どこか憧れたり、どこか共感できたりする魅力のあるキャラクターです。
で、その隆聖の息子が、浅井玲於くん。
素直になれなくてヒネた口ばかりを利く、ある意味父親とは対照的なキャラクターですね。
まぁ、男性読者としては父親につっかかってばかりで、好きな子には素直になれない玲於のようなキャラクターの方が共感できますよね〜。
口は悪いけれど、根は優しくて誠実。父親という恋敵は強大ですが、それに真っ向ぶつかっていくところが、オトコノコしてますね。
とにかく恋愛要素だけでぐいぐい引っ張る、少女マンガらしい少女マンガですね。男性読者にはちょっととっつきにくいかも。
りぼんからクッキーに移ったことで、これまでの快活さよりは落ち着きを重視したようなムードですが、この作者らしいテンポのいいストーリーメイクは健在です。
2019.2