小川とゆかいな斎藤たち

(茶匡/講談社コミックスなかよし・全9巻)

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Story

小川里央は、クラスでいじめられてる引っ込み思案の女のコ。
彼女は同級生に、「恐怖の斎藤三人衆」と呼ばれる3人の男子に、ヒザカックンして来いと強要されるが、逃げようとした里央は、3年の斎藤に股裂きをし、1年の斎藤にカンチョーをし、2年の斎藤のズボンをずり下ろしてしまうという最悪の事態を引き起こしてしまう。
しかし「友だちがいなさそうな人」同票1位の4人は、それをきっかけに、似たもの同士で共同戦線を張ることに。
学校からつまはじきにされた4人の逆襲が、今、始まる!

Impression

「小川とゆかいな斎藤たち」。
なんともけったいなタイトルが気になってしまう作品ですね〜。
このタイトルでシリアスをやられたらたまったものじゃありませんが、中身は期待を裏切らないハイテンションコメディーでした。
常に内気少女の里央ちゃんがいじめられるシリアスな導入部から始まるんですが、すぐに場面は転換。サイトーズが眼光鋭く登場したり、里央ちゃんがほんわか癒しムードを醸成したり、4人で事態を解決しようとするも空回りしたり、とにかく二転三転しながらもムードは常にハイに保たれて、シリアスさは星霜の彼方へ飛んで行ってしまうのです。
ハイテなストーリーを彩るのは、少女漫画だから当然、個性的な美形男子!
と言いたいところですが、実際に脇を固めるのは、半目無表情男・斎藤仲良、金髪ピアス馬鹿ナルシスト・斎藤大喜(通称おおよろこび)、三角フラスコでジュースを飲むメガネ・斎藤保茂(通称・ホモ)という、個性的ながらルックスと性格がかなりびみょ〜ぉな面々。
しかし、単純バカのおおよろこびに、白衣マッドツッコミ系のホモくんが無遠慮にツッコミを炸裂させ、その脇でデクノボー然としたなかよしがしっかり抜け駆けをかまそうとしたりするキャラクターバランスが楽しく、思わず吹き出したりしてしまうのですね。
そして、内気な里央ちゃんがサイトーズにサポートされながら、心ない誹謗や理不尽ないじめ、陰険な策謀に敢然と立ち向かい、打ち破っていく、そのカタルシスに、最後は気持ちよく笑えてしまうのです。
「なかよし」作品らしく、あっけらかんと気持ちよく笑えるコメディーです。

Rio Ogawa

大江第一中学の、「友だちいなそうな人」ランキング1位、「パシられてる人」ぶっちぎりの1位、「ドジな人」1位、「ヘタレな人」1位、「逃げ足がはやい人」1位、「いつもあやまってる人」1位、「びくびくしてる人」1位。
ディープインパクトが尻尾を巻いて逃げだし、松中信彦も足元にひれ伏す堂々の七冠王。
それが本編のヒロイン・小川里央ちゃんです。
飾らない黒髪に、半泣きがデフォルトの大きな瞳がかわいい純朴少女ですね〜♪
時折見せる笑顔がほんわかとしていて、実に癒されますですよ。
まぁ正直なとこ、ほんとにいつもびくびくしているので、読んでいる方もイラッと来ないでもなかったりするんですが(苦笑)、サイトーズにどなられ、すごまれたりしつつも、どんな困難にも逃げずに(びくびくしてるけど)真っ直ぐ立ち向かう姿がいじらしくて、応援しちゃいたくなる女のコですね〜。
そして、自分のことでは自己主張しなくても、大切な友達・サイトーズとの絆を守るためなら、勇気を振り絞って間違っていることは間違っていると言う、そんな友達思いなところが、とても素敵なヒロインなのです。

Charactor

黒髪美少女・里央ちゃんとともにタイトルに名を連ねるのが、大江第一中学にその名を轟かせる狂犬集団「恐怖の斎藤三人衆」! 
その筆頭は3年生、金髪ヤンキー馬鹿ナルシストの四重苦を抱えるおおよろこびこと斎藤大喜
最上級生ではあるんですが、ただのバカ以外の何物でもなく、言動は直情径行型、ストーリーをかき回すだけかき回しておいて、ほとんど役に立っていない、存在レベルで疑問な先輩です。
2年生、里央ちゃんのクラスメイトになるのがデクノボー然とした怪力無口巨人・斎藤仲良。ヒロインと同級生だし、いつもさりげに里央ちゃんをサポートしてるし、掲載誌と同じ名前だし、最後は里央ちゃんとくっつくのかな〜と思わないでも無いんですが、そうなったらやっぱりかなりびっくりですね。
1年生、試験管を指に挟んだ決めポーズを見せる白衣マッドメガネ(ウチのヨメさんが泣いて喜びそうなキャラだ)が、ほもくんこと斎藤保茂
容赦ないツッコミをおおよろこびに炸裂させる一方、ヤッターマンの「今週のびっくりどっきりメカ」の如く、毎回怪しげな薬品も炸裂させる、当作品最大の危険人物。こんな中学生がいてもいいんでしょうか。
………………。
………。
一応ここはキャラクターをプッシュするスペースなんですが、こいつらに関してはツッコミどころばっかりで、褒めどころなしですね〜。
しかしその実、里央ちゃんをばっちりサポートするナイスボーイズではあるんですよね。
不器用過ぎて、スペック悪過ぎるけど、印象的で憎めない。
そんなヒーローがいてもいいじゃないか、と言いたくなる、荒々しくも楽しい少年たちなのです。

Guide

少女マンガではありますが、基本的にあっけらかんとしたコメディ作品なので、ジャケ買いでOKですね。むしろ、アップダウンの激しいストーリー運びは少年マンガに近いかも。

2007.9