(matoba/スクウェア・エニックスガンガンコミックス・1〜4巻)
ひとり暮らしの森太郎の部屋のベランダに寝ていたのは、純白の羽根を背中からはやした少女。
「とわ」と名乗るその少女は自分のことを神様から人間のことを勉強して来るようにと遣わされた天使だと名乗る。
とわと暮らすことを決めた森太郎だったが、家事は万端だけれど世間知らずでどこか抜けているとわに振り回される一方。そしてふたりの周りにはさまざまな美少女たちがトラブルと一緒にやって来る。
先月(2022年9月)も、同じスクウェア・エニックスの「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」ってラブコメを紹介していたような気がするんですが。
どんだけ家庭的な天使に甲斐甲斐しく世話されて、でろでろに甘やかされたいんだよッ、というツッコミが入って来そうなんですが。
いいじゃないですかっ!
甲斐甲斐しい純白天使が、家でご飯作って待っててくれる生活なんて最高じゃないですかッ! そんな夢くらい見たっていいじゃないですかッ! と力強く開き直って紹介します、その名も「ワンルーム、日当たり普通、天使つき。」。
1巻カヴァーのとわちゃんの純白天使笑顔と、ひとり暮らし男子の夢と憧れがきっちり詰まったような15文字のタイトルに惹かれてうっかりレジに持って行っちゃったこの作品、いやぁ、期待通りでした。
突然ベランダに落ちてきた天使・とわちゃんの純真さに癒され、世間知らずっぷりに振り回され、そしてとわちゃんの他にも美少女てんこ盛りでわくわくが止まらなくなるこの作品、うん、「スクエニらしいラブコメ」だなぁ、という気持ちになりますし、こういう細かいこと抜きにぬくぬく楽しめるラブコメって、やっぱり生きていくうえで不可欠だよなぁ〜、と思ってしまうのです。
カヴァーを見て、それで期待した通りのことが展開されている安心感。そしてラブコメ感、アットホーム感、さらには天使感。
オトコノコの憧れが過不足なく詰まっていて、作品世界にすっぽり包まれて心地よくなれる、そんなラブコメ。
もうね、ホント、このマンガは癒し。心の栄養だと思うのですよ。はい。
純白の髪! 純白の衣装! そして純白の羽根!
もうヴィジュアルからして天使感のゴリ押しがハンパありません、本編のヒロインが天界から落っこちてきた天使のとわちゃんです。
天使なのはヴィジュアルだけじゃなく、ご飯作ってくれたり部屋掃除してくれたり洗濯してくれたり洗濯もの畳んでくれたりお弁当届けてくれたり笑顔で癒してくれたりと、とにかくやることなすこと一挙手一投足が甲斐甲斐しくて優しくて、そんなところがまた、「天使!」と大文字で強調したくなっちゃうくらいにエンジェリックなんですよね〜。
天界から地上へと人間のことを勉強するためにやって来たけれど、地上のお作法を勉強したのは「よいこの地上大百科」を読んだだけというアバウトさで、結果、地上世間の感覚といろいろズレまくり、天然キャラが迸っちゃっているところもまたチャームポイント。
無邪気で無垢で世間知らずで、テンション上がっちゃうとうっかり羽根が顕現しちゃったりする危なっかしさがあって、そのほっとけなさも純真なとわちゃんには似合っているのです。
「家庭的」って言葉が服着て歩いてるみたいな純真無垢な女のコ。繰り返しになるけれどやっぱり、こういう女のコにでろでろになるまで甘やかされたいッ! と思っちゃうのですよ、男子としましては。
作者のmatobaさん自身が「ちょっと懐かしいような王道落ちものラブコメ」というこの作品、当然とわちゃんのほかにもかわいい女のコが続出してくるのです。
その筆頭が森太郎の同級生、堤つむぎちゃん。
天使のとわちゃんに対し、こちらはいたってフツーの人間の女のコ。そして森太郎のことを好きすぎる女のコなのです。その行動原理はひたすら「徳光が好き」という恋する乙女思考によるもの。だけどその気持ちを言い出すことは出来なくて……という恋する乙女っぷりに、見ている読者も胸がキュンキュンしてしまう、これが少女マンガならば確実にヒロイン張れそうなキャラクターなのです。
いきなりさくらんぼ柄のランジェリーで登場するのは、森太郎のバイト先の同僚・和泉のえるちゃん。腰まで伸びたロングヘアーと冷たい表情が印象的なクールビューティー。その実は雪女だったりします。
一見クールだけれど、感情が高ぶると吹雪いちゃう(!)という体質の持ち主。それが原因か友達を作るのが苦手で、人との距離の詰め方がめちゃくちゃだし、やることなすこと極端から極端に走っちゃう、ラブコメ的にいい才能の持ち主です。
2巻から登場するのはおでこも印象的な幼女天使・しうちゃん。とわちゃんのことが好きで好きでたまらないあまり、森太郎に対して脅しをかけてきたりするなかなかエキセントリックな天使。うん、まぁ、黙っていればかわいい幼女なんですけどね。
そして本編の主人公がひとり暮らしの高校1年生、徳光森太郎。天界から落っこちてきたとわちゃんのことを受け止め、のえるちゃんの体質のことも受け入れる、高校生離れした大きな包容力の持ち主で、天使のとわちゃんさえも癒されてしまうほど。まぁ、傍から見れば“天然タラシ”以外の何物でもないような気もしますが。
カヴァーを見たときの期待を裏切ることのない王道ラブコメ。
ラブコメに新鮮さを求める方、「ラブコメはもう飽きちゃったよ〜」という方には向かないでしょうね。
まぁ、このサイトを楽しんでいただける方なら、この王道っぷりに満足されると思います。
2022.10