(藤田麻貴/秋田書店プリンセスコミックス・全15巻)
15歳の女子高生、江ノ本花(カズラ)は、祖父の遺言により、「この家売り払って親子3人内臓売ってまぐろ船に乗っても返せ」ない借金のカタとして、天原(まがはら)瑞貴という少年の婚約者になることに。
さっそく赴いた天原家、待ち受けた瑞貴は笑顔が印象的な好青年・・・・・・と思いきや、その実根性曲がりの策略家。しかし、彼の性格が歪んだ裏には彼の秘められた能力と、彼を蔑みながら寄生する旧家・天原家の存在があった。
学校で、天原家で、花を翻弄する、ピンボールのような日常。曲がったことが大嫌いな花は、さて、どうする?
いや、実は。
1巻を購入した後しばらく、部屋の隅に放り投げてほったらかしにしてたんですが。
ストーリーも新しみがないし、インパクトもないし、フツーの少女マンガだよなー、とか言ってたんですが。
来ました来ました、じわじわと。ショートカットはつらつヒロイン・江ノ本花ちゃんの太陽のような魅力がじわじわと心の奥からこみ上げて来て、部屋の隅から掘り出して読み返してしまいました。
閉鎖されたコミュニティに放り込まれた少女が、縛られた世界を変えていくというストーリー。
ヒロインの圧倒的な存在感でストーリーを引っ張る作品構造。
結局こーゆータイプの少女マンガが大好きなんですよねー、私。この引力にはかないません。
ホームドラマのムードにファンタジーのエッセンス、ヒロインの明るい魅力にひとクセある脇役たちの存在、学園ものの典型的なエピソードにミステリアスなワンポイント。
オーソドックスに見えて、読者をそそる小技をたっぷり揃えたあなどれない作品で、言ってみればストレートに見えて実は手元で曲がるカットボール、みたいな小癪な変化球なのです。フツーの少女マンガだよなー、なんて言いきるのは早いぞ。
ぷにかわいいほっぺと、それを強調するショートカットがラブリー!な、江ノ本花ちゃんです♪
元気活発、人生のテーマは「倍返し」?の直情ぶり、喜怒哀楽をストレートに表す素直さ、男勝りのきっぷのいい性格。
そしてなによりも、強気な目をきらりと輝かせ、壁があったら飛び越える、飛び越えられなかったらぶち破る!みたいなまっすぐさが光っているキャラクター。
ショートカット少女の典型、基本、王道といった感じの溌剌少女なのです。
そしてほっぺをぷにぷにしてみたくなる、かわいい笑顔が魅力的。それと、ひよこ色したさらさらのショートカットも毛先をなでなでしちゃいたくなりますねー。そんなルックスもショートカット党にはたまらないインパクトがあります。
。ヒロインの魅力で少女マンガを楽しむ私にとりましては、こーゆー、作品世界をぐいぐい引っ張る存在感のある女のコっていうのは最高にうれしい存在。こーゆーヒロインって、ほんと、少女マンガらしいなー、っていう気になりますね。
フツーっぽさとタフさを併せ持ったプラチナヒロイン。その表情に心がぐいっ!と引っ張られちゃいますね。
笑顔が似合う整った顔立ち、ミステリアスな能力、一筋縄じゃ行かない裏の顔。少女が憧れる男の魅力をよいしょっと押し込んだようなヒーロー、それが天原瑞貴。なんですが。
中途半端に陰鬱な性格がいけないのか、花ちゃんの明るさの影に隠れてちょっと地味な感じがありますねー。せっかくハイスペックを誇っているのに・・・もったいないハナシではあります。
花ちゃんのキャラクターが作品イメージを規定してる分、他のキャラもちょっと地味目かも。
それでも、じわじわといい味を放出し続ける黒髪ミステリアス少女・相良月子ちゃんや、無表情な同居人・乾灰人、カルそ〜にいつも笑ってるけど腹の底が見えない天原七瀬、花に負けないくらい明朗快活、でも瑞貴に宣戦布告しちゃう各務俊延、となかなかクセのありそな脇役陣が揃っていて、なかなかの豪華版なのです。
1巻のカバーはメイド姿の花ちゃんですが、メイドものではありません。
少女マンガを読み込んでる人ならデジャヴを感じるようなオーソドックスなキャラ&シチュエーション。それだけに読みやすく、少女マンガ歴の浅い人でも楽しめそうですね。
学園パート、ホームドラマパートと舞台がふたつあるので、ちょっと整理しにくいかな。とりあえず花ちゃんのキャラクターをメインに読むのがいいと思います。
2003.11