(藤田麻貴/秋田書店プリンセスコミックス・全15巻)
15歳の女子高生、江ノ本花(カズラ)は、祖父の遺言により、「この家売り払って親子3人内臓売ってまぐろ船に乗っても返せ」ない借金のカタとして、天原(まがはら)瑞貴という少年の婚約者になることに。
さっそく赴いた天原家、待ち受けた瑞貴は笑顔が印象的な好青年・・・・・・と思いきや、その実根性曲がりの策略家。しかし、彼の性格が歪んだ裏には彼の秘められた能力と、彼を蔑みながら寄生する旧家・天原家の存在があった。
学校で、天原家で、花を翻弄する、ピンボールのような日常。曲がったことが大嫌いな花は、さて、どうする?
オカルト系ファンタジー的要素やホームドラマ的テイスト、さらに学園コメディのノリを取り入れた、ハートウォーミングストーリーです。
さまざまな要素を詰め込んだ上に、登場するキャラクターもやや多め。そのため焦点がぼやけ散漫になっている印象もあるんですが、そこをヒロイン・花の明朗なキャラクターにスポットをあてることでうまく作品としてまとめあげています。
ホームドラマとか学園ものといったシチュエーションに括って読むというよりは、出会った場面、出会った人々に対して江ノ本花という少女がどう考え、どう行動するかを読むタイプの作品ですね。
敵意を持って花や瑞貴を見る人間と、直接触れ合うことで、相手いの思惑や事情、抱えたものを理解し、そこからひとつひとつ敵意を融かしていく、そんな王道的ストーリー運びがキャラクターにしっかりはまっており、嫌味なくメッセージを受け取ることが出来ます。
それをサポートするようにセリフやモノローグも多めに配されて、花のキャラクターをいっそうシンクロしやすいものにしており、なじみやすい花のキャラクターと「プリンセス」系作品らしい穏やかな雰囲気で、じわっと印象に残る作品になっています。
2003.11