初恋*れ〜るとりっぷ

(永山ゆうのん/芳文社まんがタイムKR・全3巻)

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Story

天満そらは、鐘ノ台高校に入学したばかりの高校1年生。半自動ドアに苦戦したり、自動改札に苦戦したりと鉄道は苦手だけれど、仙台の近郊からJR仙石線で電車通学をしている。
彼女が鐘ノ台高校を志望した動機は、子供のころ電車で不安に思っていた時、手作りの切符を手渡して慰めてくれた「きっぷのお姉さん」に会いたかったから。
その手がかりを探すべく、そらは親友の星祭とわとともに、鉄道部の扉を叩く。
仙台近郊を舞台にした鉄道×仙台×百合の新機軸四コマ、ここに開幕!

Impression

国鉄職員の父と、国鉄職員の母(鉄道病院ですけどね)と、国鉄職員の祖父(国鉄バスですけどね)から鉄道絵本だのプラレールだのを与えられ、幼い頃から英才教育を受けて育ったワタクシ。当然ながら鉄道好きへと成長を遂げ、今も電車に乗ってあちこち出かけたりしてるわけなんですが(車窓も車両も見ないでずっと文庫本読んでるけど)。
このサイトでは鉄道マンガをあまり紹介していませんでした。
ん〜、マンガ好き兼鉄道好きの端くれとして、鉄道マンガにはそれなりに手を出してきたんですが、あまりピンと来るモノがなかった、というのが正直なところなんですよね〜。なのでこのマンガも遠くから眺めて敬遠しようかと思っていたんですが。
舞台が仙台、と聞いては小学生の頃は通院で、大学生になってからは通学で仙石線を愛用していた私、見逃すことが出来ませんでした。
や〜、これは満足。久しぶりに面白い鉄道マンガを読みましたよ。
「それ、小鶴新田やろ!」「ff〜フォルテッシモ〜! 俺も初めて仙台駅で聴いた時は滾ったわ!」「ED75だぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!」と、仙台ローカルな鉄道ネタの波状攻撃にテンションが上がりっぱなしで、首を縦にこくこくと動かしながら読了してしまいました。
が、この作品の面白いところは、それらのディテールに余計な説明は加えず、「分かる人だけ分かってね」という感じで作品のエッセンスにとどめておいて、読後感はあくまで「かわいい……」「尊い……」「先生×生徒の百合、最高です……」と、ちゃんと百合四コマの感想が込み上げてくるところなんですね〜。
鐘ノ台高校鉄道部の面々が、ぎゅむぎゅむしながら宮城県内各地へ小旅行したりする様子は、まさに小動物を観察しているようでもうこうなったら全速力でほっこりするしか!
これはまさに、レールの上を駆け抜ける萌えのはやぶさ超特急。鉄道マンガの皮をかぶった破壊力満点の萌え四コマに、表情筋が全開で緩んでしまいます。

Mahiro Miyazawa

JKがたっぷり出てくる萌え四コマで、いつもの私なら迷わずJKヒロイン・天満そらちゃんをプッシュするところなんですが。
ここは1巻の登場人物紹介で「1番線」を担う宮沢まひろ先生をピックアップしちゃいます。
おお、女教師! という期待を裏切る、金髪ショートカットのベビーフェイスな先生。それをおっきなリボンと生徒相手でも丁寧語という物腰が補強し、トドメはアリスブルーのワンピースに白いエプロンといういでたち。「こんな女教師がいてたまるか〜〜〜〜〜ッ!」と荒井駅前から太平洋の方向に叫びたくなるような、ろりろりしい先生なのです。
とはいえ、泣いていたそらちゃんにお手製の切符を渡して泣き止ませ、鉄道部に入部するきっかけを作ったり、個性的な部員をまとめて今日は東北本線、明日は陸羽東線と引率したり、年上らしい包容力をきっちり発揮してくれるところもチャームポイント。
もちろん鉄道部の顧問らしく、鉄道に対する知識と情熱もしっかり完備。しかしそれを押し付けてくることなく、初心者のそらちゃんやとわちゃんに鉄道旅行の楽しみを丁寧に伝えてくれるところが、まひろ先生の魅力であり、イコールこの作品の魅力になっているんですよね〜。
リゾートみのりのように、速くはないけれど、力強くはないけれど、ゆっくり穏やかに鉄道の魅力を教えてくれる優しいお姉さん。
やっぱりまひろ先生なくして、この作品の魅力は語れないと思うのです。

Charactor

本編のヒロインが、桜色のツインテールがトレードマークの天満そらちゃん。
電車が苦手で、半自動のドアに悪戦苦闘したり、自動改札に嫌われたりしながらも、まひろ先生への想いから鉄道部に入部しちゃったという一途な女のコ。純情可憐で引っ込み思案で、いつもいっぱいいっぱいになりながら、それでも前を向くことをやめない、諦めない姿が印象的。なんとも気になっちゃう、応援したくなっちゃうタイプのヒロインです。
ロングヘアが落ち着いた雰囲気を醸し出すのが、そらちゃんのお友達の星祭とわちゃん。食いしん坊で、料理上手という食欲魔人のような女のコ。その趣味が高じて、駅弁をパーフェクトに再現しちゃえるっていうんだからタダモノじゃあありません。とわちゃんが作る阿武隈川鮭はらこめし……これは是が非でも食べてみたいですよね〜。コイバナに敏感な恋愛脳っぷりもJKらしいチャームポイントですね。
ほわほわしたキャラが揃う本作品の中で、貴重なツッコミ役となっているのがまひろ先生の妹・宮沢みかげちゃん。お姉ちゃんに憧れていて、お姉ちゃんのようになりたいと努力しているマジメっ娘。だけど鉄道知識は驚くほど皆無で、なにかと空回りしてしまうのが役回りだったりもします。そんなアンバランスなところがまた、魅力なんですよね〜。
ベレー帽がトレードマークの小川琥珀ちゃんは鉄道部唯一の上級生で、生徒会長も務めているというクールな女のコ。まひろ先生よりよっぽどしっかりしていて、そらちゃんたちを優しく導く先輩なのですが、油断してるとついついはしゃいでしまったり、恥ずかしがり屋さんだったりとかわいい素顔を秘めているんですよね〜。そんなギャップがなんともキュートな先輩なのです。

Guide

えー。
全開で推しては見ましたが、仙台近郊の鉄道ネタが説明なしでぼこぼこ放り込まれているので、仙台生まれの鉄道好きで百合読みという私のような特殊性癖の持ち主はともかく、どれだけのヒトに受け入れられるものなのか、結構疑問だったりします。
逆に元ネタが分かる人にとっては説明なしで放り込まれるネタが、「あ、分かる分かる」と膝を打ってのめり込めるポイントに。かなり読み手を選ぶ作品であり、ハマる人はハマる、あるいは細かいコト気にしない人なら楽しめる、そういうタイプの作品ですね。

2019.11