烈華封魔伝

(葉月しのぶ/光文社コミックス・全4巻)

真・烈華封魔伝

(葉月しのぶ/角川書店あすかコミックスデラックス・全5巻)

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story

退魔師・美神烈。名前から想像されるとおり、彼は男だが、肩まで伸びる美しい黒髪、たおやかな顔立ち、か細い体型、そして何より女言葉。誰もが一目見て美女と見まがう美形である。しかし火界呪を得意とする彼の腕は確か。さまざまな妖魔を浄化し、退けていく。彼に自称「稀代の陰陽師」・白牙院剛、謎の男・神津淋らが絡み、華麗な退魔劇が繰り広げられる。

impression

なんか社会人になってから(ふしぎ遊戯を見始めたあたりからかな)、けっこうファンタジーものとか、退魔師ものとか見ているような気がするんですが、そのなかでも出色。やたらグロテスクでスプラッタな描写が相次ぐわけでも無し、お色気があるわけでも無し(青年誌の退魔師ものにはこれが不可欠でございますのお)、たしかにキャラクターは個性的だけど、それほどインパクトが強いということもなく、キャッチーな作品ではないんですが、目を引くような要素があるからいいわけではないんだぞ、という気にさせられます。結局、そのバランスがまた、ヨシ!なのですね。
また、葉月さんの作品ってちと耽美方向に走ってるような作品が多い気がするんですが、この作品は美形キャラが出てきてもけしてそこまで行ってない、というのも○ですね。
ワタシも耽美に全く抵抗がない、というわけではないので。でも、美神みたいな男だったらいいかも。って、なんの話だ。

My Favorite Episode

7月XDayめいわくな奴(「烈華」2巻収録)

光文社版の2巻は、まだ前世云々のエピソードがなく、ハートウォーミングなストーリーが多いので、読みやすい話が多くていいですね。この話はユーモアに徹していて、この作品の中では異色。

なよ竹天女(「烈華」4巻収録)

美神と剛がそれぞれのカラーを出して突っ走ってる上に、神津や、ゲストキャラの梨緒もいい味だしていて、豪華絢爛です。前後編100ページ一気読み。ともすると話がとっちらかりそうなんですが、「アプサラス」がキーワードになって、骨組みがしっかりした印象になっています。

真夏のブリザード(「真・烈華」1巻収録)

ゲストキャラの中では梨緒と、この話に出てくる雪華が好きです。一途で雪女でレズビアン。あぁん、最高、って感じですね。ヨッパらってんじゃないか、俺(つーより病気だよ)。悪意のない妖しが相手で、美神たちも振り回されます。そこがいいのだ。

guide

「真」からだけでも楽しく読めますが、やはりここは光文社版から読んで欲しいです。入手は大変かもしれませんが。烈と剛のかけ合いから始まって、事件へだんだんと関わり合っていき、そしていよいよクライマックス、という高揚感をたっぷり味わいたいもの。下手に前の話を引きずるより、一話完結できちんと区切りをつけて読んだ方が、そのテンポを味わえます。「真」の5巻を除けば、ストーリーものと言うより連作もの的な見方をした方がいいような気がします。

1998.11