(葉月しのぶ/光文社コミックス・全4巻)
(葉月しのぶ/角川書店あすかコミックスデラックス・全5巻)
退魔師・美神烈。名前から想像されるとおり、彼は男だが、肩まで伸びる美しい黒髪、たおやかな顔立ち、か細い体型、そして何より女言葉。誰もが一目見て美女と見まがう美形である。しかし火界呪を得意とする彼の腕は確か。さまざまな妖魔を浄化し、退けていく。彼に自称「稀代の陰陽師」・白牙院剛、謎の男・神津淋らが絡み、華麗な退魔劇が繰り広げられる。
美形の男たちが出てくるファンタジーというかオカルトというか、そういう作風で固定ファンの多い葉月しのぶさんの作品。
こういう作品ですとどうしても話が重くなりがちですので、まとめかたとしてはギャグで通すか、ハートウォーミングなものにするか、ひたすらスプラッターな迫力で押すか、というあたりになるんですが、この話は基本的に、ハートウォーミングな話でまとめる方向を選んでいます。その上で女性的なやさしさを持つ美神というキャラクターと、ちょっとぶっきらぼうで悪ぶってるけど心根の温かい剛という対照的なキャラクターが効果的なんですね。その両者、個性豊かなんですが、作品自体はストーリー重視で、キャラクターに負われている感じはしません。そのせいで読後感がすっきりとしたものに感じられます。
1998.11