(宮月もそこ・笠間裕之/芳文社まんがタイムKRコミックス・全2巻)
学校よりもお風呂よりもゲームが好きという不摂生JKのこかげは、ある日金髪少女・リューディアに半ば拉致される形で彼女が住み込む銭湯・花の湯に連れ込まれる。
そこでサウナを初体験したこかげは健康的な生活を手に入れることが出来たが、そこにはサウナの蘊蓄が迸る芹香、ライヴァル店のお嬢様・槇ももれなくついてきて……。
多勢に無勢、毎日のようにサウナに連行さるようになったこかげに、安寧のゲームライフは帰ってくるのか!?
アウトドアなど、一般に男性が好むとされる趣味を美少女たちにやらせるというのが最近の「きらら」系の得意技だったりするわけですが。
そして世はサウナブームと言われて久しいわけなんですが。
予想通りにやってくれました、JK×サウナの新機軸、それがこの「さうのあっ!」なのです。
サウナが舞台ということは、JKの全裸が! 半裸が! 柔肌が! お色気が! 画面狭しと迸るはずッ!と、鼻血をこらえながら両の拳を握って期待しちゃうわけなんですが。
そして実際にJKの全裸が半裸が柔肌が結構な割合で出てくるんですが。
……なぜかイマイチお色気が感じられないんですよね〜。
それはお色気以上にサウナに関する薀蓄が迸りすぎてるからとか、リューディアのテンションが高すぎるからとか、こかげのテンションが低すぎる上に性格が歪んでるからとかいろいろあるんですが、なによりJK4人がサウナでわいわい楽しんでいる様がなんとも愛らしいから。
その4人のかけあいはなんとも軽快で、リズミカルなボケに鋭くツッコミが入るテンポがなんとも絶妙。お色気を楽しむよりコントを楽しむ、という要素の方が強く、その気楽さがなんとも心地いいのです。
その心地よさはまさに「読むサウナ」。
「さうのあっ!」を読んで気持ちが明るく整ったら、こんどは身体を整わせるためにサウナに行きたくなる、なんとも楽しい作品です。
本編のヒロインがリューディア・アラヤちゃん。
透き通るような白い肌に金髪碧眼、さらに高校生離れした豊満なバストを備える、北欧はフィンランドから来た留学生です。
サウナの本場からやって来ただけあってサウナが大好き、日本に来るときに住む家の条件が「治安良し トイレ・風呂別 サウナ付き」だというのですから流石。そして銭湯「花の湯」に下宿しているんですからそのサウナ愛は半端じゃありません。フィンランドってみんなこうなの?
スカンジナビアに住まう妖精か、あるいは北欧の美神の生まれ変わりかというようなルックスをしていますが、その実、性格はハイテンション。日本文化を愛し、吸収するのに熱心な一方でフィンランドの文物を日本に広めることにも熱心で、周りのこかげたちを戸惑わせることも一度や二度じゃないんですが、そこがこの作品のエンジンになっているだけじゃなく、リューディアの魅力にもなっているんですね〜。
ハイテンションな上にパワフルなのもリューディアの個性で、銭湯の手伝いとして斧を振り回して薪を割ってるくらいならかわいいのですが、鉞持って学校の木を切りにかかるわ、片手一本でこかげを拉致しにかかるわ、やってることは若干迷惑系。
でもそんなところもチャームポイントに思えてくるのが、天真爛漫なリューディアの魅力なんですよね〜。
リューディアとサウナライフを共にする楽しいメンバーをご紹介しましょー!
本作品の主人公が黒髪ダウナー少女の景山こかげちゃん。ネットとゲームが好きで、ゲームをする時間が削られちゃうからお風呂に入る時間がもったいない! お風呂なんか3日に一度入れば十分! という合理的(?)な思考の持ち主。当然、なんなら24時間でもサウナに入っていたいという他のメンバーとは相いれることなく、それゆえにいいツッコミ役になっているんですよね〜。
毎回毎回サウナから逃げ回り、サウナの中では苦痛ゆえに表情を歪ませながらも、なんだかんだいってサウナに入っている付き合いの良さ(押しの弱さ?)もチャームポイント。本作品のいいナヴィゲーター役です。
もうひとりのナヴィゲーター役となるのが、こかげ、リューディアとクラスメイトの清水芹香ちゃん。黒髪に眼鏡というルックスから想像される通りの知性派で、当然サウナの知識も豊富。それゆえに口から迸るサウナ知識がコマを埋め尽くす、というのが毎度毎度のお家芸になっています。
カタチから入るタイプらしく、サウナグッズも豊富に装備。こんなかわいいコと一緒ならサウナも楽しいんだろうな〜……と思わせといて、こんなに大量の蘊蓄を浴びせられるのもツラいな〜、とも思わされるなんとも希有なバイプレイヤーです。
花の湯のライヴァルであるスーパー銭湯「ホット・パラディーゾ」の自称看板娘が、高野槙ちゃん。「〜ですわ」が語尾のお嬢様口調に、縦ロール気味の髪、すぐにマウントを取ろうとする態度と、いかにも厭味なお嬢様キャラですが、その実昭和レトロな花の湯でも常連だったり、友達が来るときは率先して「ホット・パラディーゾ」の掃除をしてたりと憎めないお嬢様。そんなところがクラスメイトからも親しまれていて、愛され系悪役令嬢とでもいうべき、なかなかレアなポジションに収まっているんですね〜。
2025.8