スロウスタート

(篤見唯子/芳文社まんがタイムKRコミックス・1〜4巻)

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Story

一之瀬花名はアクシデントがもとで高校受験が出来ず、中卒から1年経ってようやく高校へ。
出遅れた花名は、リスタートを切るべく両親の住む東京を離れ、従姉の志温が管理人を務めるアパートに引っ越し、見知らぬ町で暮らし始める。
しかし、人見知りの花名にとって、知らないひとばかりの高校生活はハードルが高くて……。

Impression

「瓶詰妖精」などでおなじみ、ぷにかわ絵描きの篤見唯子さんがついに萌え四コマを……!
となれば、これは期待大。
中卒浪人しちゃった、内気な女のコが新たな一歩を踏み出す物語……というと、これは少女マンガの路線だなぁ、ちょっと重そうかなぁ、と最初は思ったんですが。
オタ系ツインテール元気娘・たまてちゃんがストーリーをぐいぐい引っ張り、栄依子ちゃん&冠ちゃんの百合ップルぶりに萌え度はフルゲージ。JKだけじゃ物足りないという方には巨乳な管理人さん、志温さんも用意されていて、全方位的に和めて萌えて癒される、いかにもスロウな空気が心地いい作品なのです。
……って肝心のヒロイン・花名ちゃんをプッシュするのをうっかり忘れるほどの充実度。
ここに小動物系の花名ちゃんのかわいらしさ、真面目さが加わるんですから、いやもう、どこから萌えたらいいか分かんなくなっちゃいますね。
もちろん、浪人設定の方も作品の柱として機能。他の登場人物も、ひとに言えない趣味だったり、コンプレックスだったり、経歴だったりを持っていて、そういうところが作品に読み応えをプラスしています。
「ローギア派四コマ」というのがこの作品のキャッチフレーズですが、ローギアでもしっかり前に進んでいく、その手応えが心地いい作品になっています。

Hana Ichinose

本編のヒロインが、一之瀬花名ちゃん。A型。
高校受験期のアクシデントで1年浪人してしまい、それがもとで引っ込み思案に……というよりは、もともと引っ込み思案でちょっとスローな女のコですね。
生真面目で、ちょっとかまってちゃんなところがあって、一生懸命すぎて空回りしがちで打たれ弱くて、なんだかめんどくさい女のコだったりもするんですが、花名ちゃんの場合はそこもひっくるめてチャームポイント。
なんとも小動物的な、かまいたくなる系、いじりたくなる系のあぶなっかしさがあるんですよね〜。
スローな上にまっすぐ進めない、そんな花名ちゃんですが、それでもゆっくりゆっくり成長していて、そこを観察、もとい、愛でるのがこの作品の正しい鑑賞法。
自分のどこかをこのコに重ねてみてしまって、だから成長する花名ちゃんに勇気をもらって、そんな感じでシンクロできるヒロインです。

Charactor

いつでもハイテンションにマイペースなツインテール娘が百地たまてちゃん。そこはかとなく、時にあからさまに漂うオタク臭、だけどもしっかりコミュ力高い女のコだったりして、おまけに料理上手と、なかなかスペックの高いサブヒロインです。おっきなリボンと八重歯がチャームポイント。無駄知識が豊富なところもチャームポイントですね。
花名ちゃんとは対照的に、誰とでも瞬時に友達になれちゃうクイックスターターが十倉栄依子ちゃん。4人の中ではいちばん大人びた感じの女のコですね。気遣いできて、しっかり者で、褒め上手。コミュ力高いって、こういうことなんだなぁ〜と、思い知らされるキャラクターだったりします。
引っ込み思案で言葉少なで、庇護欲がそそられるちっちゃな女のコ。それが千石冠ちゃんです。栄依子ちゃんとはナイス百合カップルになっていて、そこがまたいいですね〜。花名ちゃん同様こちらもスローペースな女のコ。大食漢で、おっきなお弁当箱を持ってくるけど、食べるのが遅くて全部食べられない、なんて意外なラインから萌えポイントをえぐってくれます。
コマからはみ出すほどの巨乳がトレードマークなのが、花名ちゃんの従姉で、アパートの管理人の京塚志温さん。ふわふわっとした黒髪がいかにも優しいお姉さんって感じですね。やっぱり管理人さんはこうでなきゃ。いつも陽気なお姉さんで、花名ちゃんとはいいコントラストになってます。

Guide

シリアスなテーマを重く描くでもなく、あっけらかんと笑い飛ばすでもなく、真摯に向き合いながら柔らかく描いた作品です。
それだけに、無心に萌えようとするとちょっと引っかかる面も。かつ、読み込むには物足りなさがあり、ムード重視で味わうのが吉といえるでしょう。

2014.11