だって好きなんだもん

(吉住渉/集英社りぼんマスコットコミックス・全2巻)

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Story

紺野望加(もか)は、一途な恋に憧れる高校生。
テレビの美術番組で妻のベラを生涯描き続けたシャガールに感動した望加は、画集を探しに行った図書室で、シャガールの本を手に取る少年・芳井柾人に出会い、一目惚れする。
首尾よく柾人と仲良くなった望加だが、いきなり上級生と彼との修羅場を目撃。
そして「他人の彼女しか好きになれない」という柾人の異常な嗜好を知ってしまう・・・

Impression

一途な恋に憧れる女のコと、ひとクセある美形の男子が出てくる学園ロマンス。
まさに少女の憧れがフルスロットル! な一直線ラブストーリーなのかと思ってページをめくってみたんですが、さすがベテラン・吉住渉さんの作品だけに一筋縄でいってくれません。
「他人の彼女」にしか恋することが出来ない純愛欠乏症の芳井、帰国子女の弟・芽久生、ミステリアスな黒髪美少女・梢ちゃん……それぞれのキャラクターが出会うたびに新しい関係、新しいシーンが生み出され、次から次へと読者を翻弄するような新展開に突入してしまい、ただの学園ロマンスのはずなのに、なんだかムードはスリリング。
読んでてまったく油断出来ない、そのハイペースな展開力がなんとも魅力的で、あっと言う間にストーリーに引き込まれ、ページをめくる手がもどかしくなってしまいます。
正統ロマンスにちょっとスパイシーな味付けで、ちょっとドキドキのテイストに仕上がった、地味ながら手応えたっぷりの作品。
オビの惹句じゃないですけど、まさに見どころいっぱいの少女マンガなのです。

Moca Konno

「リンゴとシナモン」「苺とミルク」みたいな、ぴったりハマったベストカップルに憧れる女のコ、それが本作のヒロイン、紺野望加ちゃんです。
ちょいウエーブがかった髪が大人っぽいムードを、多彩な表情が子供っぽさを漂わせて、思春期らしいアンビバレントな魅力を持ったスレンダー美少女ですね。
顔の表情だけじゃなく、行動のパターンであるとか、手先の表情であるとか、仕種のひとつひとつであるとか、そういうところに芳井を一途に思う気持ちが出ていて、恋する乙女度がこれでもか! というくらいに読者に伝わって来ますね。
こうなると読んでいる側としては「望加ちゃんがんばれー!」という気持ちになると同時に、「芳井なんかやめとけよー」という気持ちにもなっちゃったりしまして、なんとも複雑なココロモチになってしまう。
萌えるとかシンクロするじゃなく、親友や家族のような気持ちで見守ってあげたくなる、そんなタイプのヒロインです。

Charactor

ミステリアス系黒髪美少女・神崎梢ちゃんであるとか、望加ちゃんの親友で強気系ショートカット少女の朝岡光美ちゃんであるとか、ジョシコーセーキャラも出てくるこのマンガですが、インパクトがあるのは3人の男子キャラですね。
まずは本編のヒーロー、芳井柾人
メガネがトレードマークのフェロモン系少年。美術好きなんてところは少女読者にとってツボかも知れませんが・・・他の男とつきあってる女のコしか好きになれない、という性癖をどう理解したらいいのか。なんか、人気になりにくそうなヒーローではありませんか。
もっとも、性格のいい好キャラではありますし、その性癖の裏にはいろいろ事情もありそうなので、今後好感度は上がって行きそうなポテンシャルは秘めてますね。
好感度、という上では望加の弟、芽久生の方が一歩も二歩もリードかな。お姉ちゃんに負けず劣らずの純情一直線キャラで、いかにも弟タイプ、かつ二枚目。さらに帰国子女。なかなかにハイスペックで人気が出そうですね。
個人的にはこーゆーキャラは一発凹まされたりしてくれると楽しい、とか思っちゃうんですが。
謎キャラなのが、芳井につきまとう岩沙
飄々としたキャラで、個人的には好きなんですが、今後この作品にどう絡んでくるのか、まったくの謎。展開力抜群の作品の中で、いまだその中に直接関わっていないキャラだけに、今後が気になるキャラではあります。
どこか芳井らを見下ろしながら見物してるようなムードのある大人っぽいキャラで、この作品をシリアスに陥らせないようにする中和剤的な役割も感じられますね。

Guide

年少向け少女マンガとしてはちょっとクセのある感じのラブストーリーで、この系統の作品に慣れてない方にはとっつきにくいかも知れませんね。ムードは陽性なので、読んでて辛くなることはないと思いますが、それでも男性向きではないと思います。
脇を固めるキャラがしっかりしているので、ヒロイン・望加にシンクロするというよりは、少し視点を離して、群像劇的に各キャラの動きを楽しんだ方が、より深く味わえるような気がします。

2005.6