(佐倉おりこ/実業之日本社ジャルダンコミックス・1〜3巻)
高校に入りはしたもののどこの部活に入るか決めていなかったはるかは、お菓子につられるままにゴルフ部の扉を開けてしまう。
ゴルフ経験者の冬姫がいるだけの部員ふたりの弱小部活で、ゲームでしかゴルフをやったことがないはるかはパター、練習場、コースとひとつひとつ経験を重ねていく。
やがてゴルフ部には夏陽も加わり、順調に部員が増えていくが……。
えー。
ゴルフなんかかなり無縁なんですが。大学の授業でゴルフを選択してたので、校庭でクラブ振り回したり、時折学友と打ちっぱなし行ってぺちぺちボールを打ったりしていたものの社会人になってから三十年弱、ゴルフってモノとは縁がなく、むしろ敬して遠ざけながら生きてきたんですが。ゴルフ場銀座の信州に住んでいるのにもったいないとも言われるんですが。
本サイト開業23年にして初のゴルフマンガのご紹介です。はい、もちろん絵師買いです。
ゴルフコミックと言ってもいわゆるスポ根でもなく、ディテールで勝負するわけでも、読めばゴルフが上達するわけでもなく、4人の女子高生がゴルフしたりお菓子食べたりお買い物行ったりゴルフしたりお買い物行ったりお菓子食べたりお菓子食べたりするだけの、ひとすらユル〜いマンガ。
だけども、クラブを気持ちよく振り回して青空に放物線を描く解放感や、コースを回る楽しさ、なによりも「うまく行かなくても、失敗しても、ゴルフって楽しい!」って雰囲気が画面からあふれ出てきて、読んでいるこちらも解放感を感じながらうきうき出来ちゃうんですよね〜。
読んでいるとつい、「ゴルフって楽しそう……」と呟きたくなる好作品。
まぁ、勤め先でそんなこと呟こうものなら瞬く間に勤め先のゴルフ部のメンバーに軽井沢72GCあたりに拉致されかねないので、絶対口には出しませんけどね!
それではゴルフ部の面々をご紹介。
ヒロイン格の宮里はるかちゃんは天真爛漫を絵にかいたような、お菓子大好き黒髪少女。好奇心旺盛で、面白そうなことに真っ直ぐ向かっていくところがなんだか眩しくて、はるかちゃんを見ているだけで「ゴルフって面白そう」って気持ちになっちゃうんですよね〜。何も考えていないようで案外気配りも出来るあたり、この作品のいい牽引役だと思うのです。
そのはるかちゃんをゴルフ部に誘ったのが横峯冬姫(いぶき)ちゃん。ゴルフ部創設者の娘で、お金持ちのお嬢様。生真面目で、なんでもお金で解決しようとするきらいはありますが、仲間想いでゴルフ大好きな部長さんなのです。いつも堂々としている割には友達作りが下手で人づきあいが不器用なあたりが微笑ましいお嬢様です。
岡本夏陽ちゃんはショートカットの活発少女。運動全般が得意でいろんな運動部からスカウトされていたんですが、「ゴルフは野球よりも飛距離が出るんだぞ」って理由でゴルフ部を選んだ、なんとも単純明快な明朗少女です。飛距離だけならゴルフ経験者の冬姫ちゃんよりも上。スポーツバカに見えてその実料理も得意だったりして、なにかとスペックの高いボーイッシュガールです。
そして4人目が樋口楓ちゃん。黒髪眼鏡のルックスから予想される通りの、ちょっと内気な真面目っコ。運動も苦手ですが諦めることなく努力してて、パットが得意。コースに出ればはるかちゃんと同等のスコアを残して見せる努力家なのです。このコのチャームポイントはなんと言っても、幼なじみの夏陽ちゃんにベクトルがしっかり向いていて、常に「ナツ大好き」オーラを振り撒いちゃっているところ。そんな一途さがこの作品に一陣の、百合色の風を吹かせています。
ゴルフマンガではありますが、ディテールは最小限。あくまでもかわいい女子の交流と、百合の風味を楽しむ作品ですね。ゴルフについては初歩の初歩から説明されていますから、ゴルフなんかよく分からない、クラブも握ったことないという人でもストレスなく楽しめると思います。逆に本格的なゴルフ描写を求める人にはもの足りないでしょうね。
2021.11