ツバサ

(CLAMP/講談社コミックスマガジン・全28巻)

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Story

玖楼国の姫君・さくらと考古学者の小狼は、身分違いながら運命で結ばれたふたり。
しかしさくらは発掘現場で変動に巻き込まれ、意識を失ってしまう。
神官・雪兎の力で「次元の魔女」侑子の許を訪れた小狼は、さくらが意識を取り戻しても小狼との記憶は戻らないという代償を受け入れ、さくらが失った記憶の翼を取り戻すために、異世界からやって来たふたりの青年とともに、時空を渡る旅を始める。

Impression

2003年最大の話題作かもしんない。
講談社を席巻するCLAMPさんが(講談社文庫の挿絵まで描いてるもんなぁ)週刊少年マガジン誌で縦横に展開する新作です。
いきなり登場のさくら姫に、「うおお!これは!萌え〜っ!っつーか、はにゃ〜ん!」と思わせておいて、本編の展開は燃え度の高い鍵集め系本格ファンタジック・アドベンチャー。
さらにはCLAMPさんお得意の、ノリのいい関西系かけあいコントも用意されていて、CLAMPさんのエッセンスがみっしり凝縮された作品になっています。
しかし凝縮されているのはストーリーのみならず、大ヒット作「カードキャプターさくら」を想起させる小狼(シャオラン)、さくら姫、桃矢王、雪兎神官、知世姫といったキャラを手始めに(鍵集め系のストーリー展開も同作品を連想させますね)、「X」「ちょびっツ」などCLAMP作品とパラレルなキャラクターが総出演。
違う作品同士をリンクさせるのは「X」と「東京BABYLON」など、CLAMPさんの得意技でもありますが、今回はそれを徹底し、CLAMPオールスターゲームのような様相を見せています。
もちろん単体の少年系アドベンチャーとして読める配慮もされており、いわばこれはCLAMP作品の入門編にして究極形。
なんか、とんでもない作品がリリースされちゃいましたね〜♪

princess SAKURA

はにゃ〜ん、リターンズ!?
「カードキャプターさくら」の木之本桜ちゃんよりちょっとアダルトな感じになってのカムバック(!?)、パラレルワールドの桜姫です。
もとはといえばさくらちゃん萌えが嵩じてこのコーナーを作った私としては、絶対に外せないヒロインですね。
いや、当作品の出番は小狼と黒鋼、ファイが中心で、さくら姫の出番は侑子さんや嵐とどっこいどっこい程度なんですが。っつーか、一話のラストで意識を失い、後は寝たきりで回想シーンや各話の扉絵でしか表情が見えないんですが。
それでも小狼が旅を続ける動機として、果てしない存在感を見せてくれますし、なにより、一話での告白未遂シーンで見せてくれる頬を染めた純粋な表情が、愛らしいふり向き顔が、桃矢王への「なんですってー!」が、扉絵で見せてくれる無垢な笑顔が。
こんなにも胸をどきどきさせてくれる、果てしなく愛しく思える、そんな失翼の天使なのです。
過去作を下敷きにした、はっきり言って反則なヒロイン。
それでも萌えちゃうものは仕方ありません。
完敗です。

Charactor

はにゃ〜んとかなんとか騒いでみたりしますが、この作品は「なかよし」連載の「カードキャプターさくら」ではなく、「週刊少年マガジン」連載の「ツバサ」という単体作品。三人の少年が旅を続ける王道ファンタジーなのです。
で、主人公が小狼。少年マンガの主人公らしい透明感や直情さを持つ一方で、誠実で勇敢、一途なあたりはやっぱりちょっと少女マンガのヒーロー的要素が入ってるかもしれませんね。ストーリーの軸を務めるにふさわしい、ヒーローらしいヒーローと言えるでしょう。
その旅のお供・その1が忍者・黒鋼。粗暴な性格、黒ずくめのビジュアルでなかなかいいインパクト。その激しい言動と、その言動が空回りする辺りがおいしい、わかりやすいキャラクターです。
で、その2が魔術師・ファイ・D・フローライト。スリムな外見ににやにや笑顔、底を見せない言動は優しげな中にもちょっと得体が知れなくて、黒鋼とは逆にわかりにくいキャラクター。個人的にこーゆーキャラが好きなので、今後の活躍に注目したいところです。
で、余談ながら知世姫。・・・あいかわらずい〜い味出しまくってくれますねー♪

Guide

「カードキャプターさくら」を知らない人には困ってしまうんではないか、という作品紹介の仕方をしましたが。すいません、私にとってはあの作品の影響は大き過ぎるので、どうしても「CCさくら」に言及せずに「ツバサ」を語ることが出来ないのです。
もちろんながら「ツバサ」という単体の少年系ファンタジックアドベンチャーとして、しっかり楽しめる、クオリティ高い作品として成立してますので、「CCさくら」を未読の方でもしっかり楽しめます。
が。
読後の感想は「CCさくら」経験者と未経験者では大きく分かれそうな問題作ですね。
私としてはもちろん、「CCさくら」と併読することをおすすめいたします。
ついでながら侑子さんがメインの「XXXHOLIC」(CLAMP/講談社KCヤンマガ)という作品もこの作品といろいろシンクロしてるようなので、余裕のある方はこちらも合わせて楽しまれると良いでしょう。

2003.8